第245話 モーデルの遺跡にて1
二人はそんな話をしながら
高さ10メートルほどの2本の石柱が7、8メートルほど間を空けて立っているため門に見えるが、そこに扉がついているわけではない。柱の奥は門柱の幅で通路になっている。中は暗い。
「この門、大きいね」
「そうですね。なんのためにこれほど大きな門を作ったのかは私にもわかりません」
門柱?をくぐると、そこからは石造りの通路で、床には外から吹き込んだらしくかなりの量の砂が溜まっていて床の本来の姿はわからなかったが、左右の壁や天井はツルツルに磨かれた石でできていた。
通路を300メートルほど進むと行き止まりになってしまった。明かりはどこにもないので、入り口から入ってくるわずかな光しかない。キーンは遺跡に入る前に念の為20倍強化をしているので、その程度の光でも十分あたりの様子を見ることはできる。
通路を塞ぐ壁の表面はこれまでの通路の壁と同じくツルツルでどこにも出っ張りやくぼみは見えない。
「ここは、私とテンダロスが通ったときには何もありませんでした。前回は、テンダロスが『鍵』を持っていたので、『鍵』を使って開いていたのでしょう。テンダロスと私がこの遺跡を出た後閉まったのだと思います」
「困ったな。やっぱり一度バーロムの屋敷に戻ってその『鍵』を探したほうがいいかな?」
「いえ、どうせタダの石の壁でしょうから、壊してしまえばいいでしょう」
「怒られないかな?」
「誰も怒るような人などいません。私が壊しましょう。
キーンは少し下がって見ていてください』
キーンが10歩ほど下がったところで、アイヴィーが少し腰を下げて右の拳を固めて正面の壁に叩きつけた。
キーンはアイヴィーから数歩後ろに下がって、壁が壊れて破片が飛ぶことに備えていたのだが、アイヴィーの一撃では壁は壊れず、代わりにアイヴィーの腕が壁の中に肘まで突き刺さってしまった。
穴から腕を引き抜いたアイヴィーが、
「壁の表面がツルツルなのでそれなりに硬いと思っていたのですが、柔らかすぎました」
「アイヴィー、壁の厚さはどんな感じだった?」
「いま打撃した感じでは壁は厚くても1メートル超えないと思います」
「それくらいなら、いまアイヴィーが作った穴の中でファイヤーボールを爆発させればきっとうまく壊れるよ。
待てよ。それだとどれくらい崩れるかわからないし、向こうがどうなっているかわからないからファイヤーボールは止めて、ディッグアースで孔を空けてしまおう。大きさは高さ2メートル、幅1メートルでいいか。深さは1メートル、ちょっと余裕を見て1.5メートル。
ディッグアース」
音もなく壁に高さ2メートル、幅1メートルほどの孔が空き、孔の部分だった石は小石になって手前に小山を作った。壁の先には空間が広がっているようだが入り口からわずかに届く光では強化中のキーンでもその先がどうなっているのかわからなかった。
「今のは地面に穴を掘る魔術なんだけど、山間の斜めの地面にも穴が掘れるし、壁みたいに立ったものでも穴が掘れるだろうと思って試したら、意外に簡単だった」
「キーンの魔術はほんとに便利ですね」
キーンが『ライト』と一言いうと、キーンの少し前、床から3メートルほどの高さで『ライト』の白い光の球が宙に浮かんだ。
できた孔をくぐって壁の先に進むと『ライト』はキーンの動きに合わせて孔の高さにまで高さを下げた光の玉がキーン少し前を移動していく。『ライト』の光に照らされた周囲を見回すと、そこは50メートル四方の大広間だった。もちろん天井はこれまでと同じ10メートルほどの高さにある。
キーンたちが入ってきた入り口の正面の壁の真ん中に、その先に繋がる通路が伸びていた。しかし『ライト』の光だけではその通路の先が暗くて見えず、どこまで続いているのか分からなかった。
「キーン、その通路を1時間ほど歩けば私が眠っていた部屋に着きます」
「歩いて1時間ということは、6キロくらいか。通路で6キロというとかなり長いよね」
「理由はわかりませんが、なにかの理由があったのでしょう」
そういった話をしながらキーンたちは大広間を横切って正面に見える通路の中に入っていった。
通路は一本道でまっすぐ続いていたが、『ライト』の光でも通路の先は全く見えない。その中を二人は歩いていく。
……。
「アイヴィー、いま通路の先で音がしたよね?」
「そうですね」
キーンは
「アイヴィー、今度は後ろから音がしたけど」
「キーン、巨大な全身鎧が向かってきています」
50メートルほど後方に7メートルほどの背丈のある鎧の巨人が立っていた。色はおそらく銀色だ。
「デクスフェロ?」
デクスフェロそっくりな鎧の巨人が一歩、一歩キーンたちの方に向かってきている。
「デクスフェロなら人が乗ってる?
さすがにこの遺跡内に人はいないハズだからデクスフェロじゃない。
なら、全周コーンでいけるか?
いや、この通路でアレはマズいな」
キーンは背中から背嚢を床に下ろし、
「まずは、強化20!」
ボスニオンを発ってここまでキーンは通常強化だったが、キーンの顔と手の光りが一際強くなった。
「キーン、前方からの音は後ろと同じ鎧の巨人です。1体が向かってきています」
「分かった。前からくる鎧の巨人にはガードミニオンで時間稼ぎさせてみる
ガードミニオン×20」
銀色のガードミニオンが前方から近づいてくる鎧の巨人の前に20個現れ、行く手を塞ぎ、鎧の巨人に向けて一斉に電撃を放ち始めた。電撃で青白く照らされた鎧の巨人は見た目はまさにデクスフェロだった。そして、ガードミニオンからの電撃を一切寄せ付けないところもデクスフェロと同じ。ただ動きはデクスフェロより素早く、ガードミニオンに向かって両手を振るい瞬く間に2、3個のミニオンを壊してしまった。
「僕は先に後ろの鎧の巨人に仕掛けてみる。アイヴィーはそこにいてくれていい」
後方から近づいてくる鎧の巨人にキーンは
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