第8話 お弁当(前編)

いつも通りの学校。俺は学食には行けず、屋上へ来た。そして、なぜか幼馴染の美桜を一緒に弁当を食べる事になった。


「な、なぁなんで急に弁当作ってくれたんだ?」

「え、」


自分の膝の上に置いた弁当を開けようとした美桜が硬直する。


「お、おばさんに言われて…」

「そ、そっか」


それで俺を先に学校に行かせたのか。でも母さんは普段弁当とか作らないのになんでまた急に作ったんだ?しかも、美桜に。


「祥太郎、唐揚げ好きでしょう?」

「え。あ、うん」


思考回路していたらいきなり美桜に質問され、少し戸惑いながらも答える。


「ふふ、良かった…」


心底安心したかのような言葉を言って、美桜は弁当を開ける。

中身はと言うと、正しく男の子が好きな物ばかりだった。白米に、その白米が進むそうな美味しそうな唐揚げにハンバーグ。だが、野菜が全然見当たらない。俺のその疑問が伝わったのか美桜が答えてくれた。


「祥太郎、お野菜嫌いでしょう?だから、入れなかったんだ」

「い、いや、それは昔の話だろ?今はちょっとだけだったら食べるよ」

「本当?だって小さい頃は泣いて食べてたじゃん?」

「や、やめろよその話は」


そう、今でこそマシになったが昔は本当に苦手だった。


「ふふ、」

「うん?どうしたんだ?」


急に美桜が笑う。なんか美桜の笑顔久しぶりに見た気がする。


「いや、だってこうして話してたら昔に戻ったみたいだねって思って」

「確かにな」


言われてると確かにそうだ。昔はよく二人で弁当を食べたり、いっぱい話もした。もしかしたら、美桜は昔から全然変わっていないのかもな。





「じゃ、じゃあ、祥太郎、あ、あーん」

「え」


箸で唐揚げを持ち上げて、顔を真っ赤にして俺に向ける。


「い、いや、それはちょっと、、」

「早く食べて、、私も恥ずかしいんだから、」

「うぅ…」



仕方ないので、周りに誰もいない事は確認して、




パクっ




「はぁ…!どう、美味しい?」

「う、うん、凄く美味しい」

「よ、良かった」


本当にめちゃくちゃ美味しかった。美桜がここまで料理上手だなんて知らなかった。


「春崎ってめっちゃ料理上手なんだね」


素直な感想は言ったつもりだったが、、


「……」

ぷい、


美桜は少し怒った顔でそっぽ向いた。なんで??俺なんかしたっけ?


「え、えっと、春崎?どうしたんだ?…」

「祥太郎のバカ」

「なんで?!」



しばらくの沈黙。




「……名前で呼んでくれなきゃ嫌だって言ったのに…」

「あ、」


完全に忘れてた。昨日は結局本当に眠くなって記憶が飛んでいた。



「ご、ごめん、忘れてた…美桜だったな」

「もう、間違わない?」

「う、うん」



「じゃ後5回、私の名前を呼んで」

「え、そ、それはちょっと恥ずかしいような…」

「いいから呼んで…でないと許さないんだから」


チラッと恥ずかしそうにこちらを見る美桜。やっぱり美桜は昔から全然変わらないんだなと少し安心した。



「美桜、美桜…美桜…美桜………美桜」


…………………



スタ、


すると、美桜は急に立ち上がり、


「も、もう昼休み終わるから戻るね!」


そう言い残し美桜は顔隠しながら屋上から去っていった。



「まだ15分くらいあるんだけど…」

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