FPSで伍長だから雑魚だと思った? 実は最強クラスです。僕を追放した奴等は後悔しても、もう遅い。あと、リアルで会ったフレンドはメスガキでした。一緒に仲良くゲームします。
第1話 僕を追放したクランの奴等、ざまあ!
FPSで伍長だから雑魚だと思った? 実は最強クラスです。僕を追放した奴等は後悔しても、もう遅い。あと、リアルで会ったフレンドはメスガキでした。一緒に仲良くゲームします。
うーぱー
プロローグ
第1話 僕を追放したクランの奴等、ざまあ!
僕がいつもどおり家庭用ゲーム機でミリタリー系シューティングゲームのオンライン対戦をしていたら、クランのサブリーダーから個別チャットの招待が届いた。
クランというのは、フレンドグループのことだ。ファンタジーゲームを遊ぶ人にはギルドといった方が通じやすいかもしれない。
「はい。Kazuです。なんでしょう」
「あのさ、お前、クラン抜けてくれない?」
「……え?」
聞き間違い……じゃないよな?
クランを抜けろ?
どうして?
定期的に開催されるクラン戦には参加していたし、ボイスチャットでフレンドを誹謗中傷するような悪質プレイもしていない。
何も心当たりがない。
僕が言葉を失っているとサブリーダーは続ける。
「お前、いっつもウーパーばかりで勝利に貢献してないくせにポイント稼ぎすぎなんだよ」
「そんな……」
ウーパーというのは、街中でよく自転車を見かけるあの宅配サービスが元ネタのゲーム用語だ。
ゲーム内でウーパーと言う場合は、弾薬箱や救急箱を届ける者を意味する。
撃ち合いには参加せずに、後方支援ばかりしているから、死ににくいしアシストポイントが入るから、その行為を妬むプレイヤーは多い。
「でも、誰かが弾薬を配らないと」
「知らねえよ。撃ち合いに参加せず弾だけ配っていて、しかも、糞みたいなキルレートと低い得点のやつは、Sランククランには不要なんだよ。じゃあな」
「ええ……」
画面には『あなたはクラン<JP_Gunmans>から追放されました』のメッセージ。
「いやいや、僕が弾や救急箱を前線に届けていたから、みんなが残弾を気にせずに撃ちれてまくれていたんでしょ? いつもみんな突撃兵ばかり選ぶじゃん。クランからアタッカーを減らしてサポートを増やすべきなのに、なんで僕を追放するの?」
僕だって銃を撃って敵と戦いたいよ。
だって、ミリタリー系シューターなんだから、敵と撃ち合うのが一番楽しいじゃん。
でも、全員が攻撃を担当していたらクラン戦で負けるから、僕は後方支援に徹していたのに。
仲間のためにウーパーしていたのに、まさか仲間を囮や盾にして後ろで得点を稼いでいる卑怯者扱いされるとは……。
「よく戦争漫画で兵站が重要って書いてあるじゃん。ミリタリーシューターだって、兵站が大事なのに……」
でも、僕がキルレート0.4の雑魚なのは事実だ。
これは10回死ぬまでに敵を4人しか倒せていない数値だ。
追放されても仕方がないのか……。
………しょうがない。
切り替えていこう。
僕だって突撃兵で敵と銃撃戦をしたり、工兵で地雷を撒いて戦車を破壊したりしたいし。
これからは野良プレイヤーとしてやっていこう。
「クランのことは忘れて遊ぶか。殲滅戦、クイックマッチ……と」
殲滅戦は12人対12人の2チームに分かれて相手が全滅するまで戦うゲームだ。一度死んだプレイヤーは20秒後に再出撃が可能になる。チームで再出撃が可能なのは50回。
つまり、チーム合計で50回死ぬまでに、敵を50人倒せば勝ちだ。
ローディングが終わり、殲滅戦が始まった。
「僕はアメリカ軍で、敵はソ連軍か。いつも衛生兵だけど、突撃兵を選択……と。撃ちまくるぞ! あれ?」
残り出撃可能数が、21対46で負けているのはいいんだけど、プレイヤー数が米軍2名でソ連軍が12名。
ソ連軍が満員で、米軍は僕の他にひとりだけ。
「あ、ああ……。レイプ部屋か……」
レイプというのは性犯罪ではなく、余りにも悲惨な負け状況を意味するゲーム用語だ。
米軍もゲーム開始時は12人居たのだろうけど、相手チームが強すぎたからみんな途中退室したのだろう。
OgataSinという米軍プレイヤーだけが途中退室せずに戦い続けている。
おがたしん……日本の男性プレイヤーっぽいな。
ミリタリー系シューターは外国人プレイヤーが多く、日本人プレイヤーは少数だ。
プレイヤー数2対12は糞過ぎる状況だけど、見捨てるわけにはいかないな!
「Sinさんお願いします!」
オープンチャットだから話しかけてみた。
しかし返事はない。
ID:OgataSinはマイクを持っていないか、家庭の都合で喋れないのだろう。
いま、夜の九時だし。
オープンチャットでは敵も味方も自由に会話が可能だから、アメリカンキッズがキャアキャアと叫びんでいるのが聞こえてくる。
「あっ。死んだ」
さすが2対12。
ひとりで6人を相手しないといけないから、出撃と同時に全方位から撃たれて死ぬ。
戦場は校庭くらいの広さの工事現場。
割と狭めだから、何処に居ても敵と遭遇してしまうな。
「Sinさん、合流できたらしましょう。このままだと出撃しても一瞬で撃ち殺される」
喋れないだけで聞こえてはいるだろうから、僕はID:OgataSinと連携することにした。
オープンチャットだけど僕等以外はアメリカンキッズみたいだし、作戦を聞かれても大丈夫だよな?
「うわ。また死んだ」
アメリカンキッズがキャアキャア叫んでいる。
麻薬でもやってんのかってくらいテンション高い。
「あれ。今ファックって言った。英語分かんないけどファックは聞き取れた。アメリカンキッズって、ファックとか言うんですよねー。《Hapo》シリーズみたいなアクション系シューターだとファック連呼のキッズが多い気がするけど、《BoD》でファックキッズって珍しいですよね。あ、また死んだ」
だんだん、脳汁あふれてきた。
だって、出撃したと同時に全方位から弾が飛んできて何も出来ずに死んでいく。
クランの勝敗が重要だったときなら、こんな死が続いていたらストレスでムカついていたはずだけど、今の僕は死んでも誰にも迷惑がかからない。
弾丸箱や救急箱を配れずに死んでも、文句を言う人も居ない。
ID:OgataSinも退室しないんだから、きっとこの状況を楽しんでいる。
「なんとか一矢報いたいですよねー」
残り出撃可能数は、4対46。
僕が参加してから、死んでばかりで敵をひとりも倒せてない。
あと四回死んだら負けだ。
「あ、ああ……」
結局、何も出来ないままひたすらボコられ続けて、僕達の米軍は敗北した。
チームメンバーそのまま、次のマップのロードが始まる。
ロード画面の表示中、オープンチャットではアメリカンキッズがハイテンションな英会話を続行中。
僕は同じ日本人同士、ID:OgataSinと雑談でもするか。
「そういえば前、面白いことあったんですよ。アメリカンキッズの高い声を女性だと思いこんだらしきプレイヤーが『オー、プリティーガール』とか『アイラブユー』とか言いだして……。ミリタリー系シューターに女性プレイヤーなんて居るわけないのに」
とっておきの小話だけど、ID:OgataSinにウケただろうか。
部屋の壁掛け時計を見たら九時半。あと一時間くらい遊べそう。
「Sinさん部屋変えます? 残るなら僕も付きあいますよー」
ロード画面のプレイヤーリストにはID:OgataSinが残ったまま。
どうやら続行するらしい。
「最後までって言っても、寝るまでの残り一時間くらいだけど付きあいますよ」
こうして僕は、クランを追放された直後の謎テンションで、レイプ部屋に居残り、死にまくった。
いや、もう、ほんと、出撃したらすぐ殺されるような状況で苛立つこともあったけど、ID:OgataSinはよっぽど負けず嫌いなのか全然退室しないから、つきあった。
負け試合ばかりだったけど、最後の最後に僕がひたすら弾薬箱をID:OgataSinに渡しまくって、僕の狙いに気付いたOgataSinが手榴弾を投げまくって最後の最後に、ちょっとだけ善戦して残り出撃数0対38でフィニッシュ。
僕達は50回死んだけど12人も倒した!
「そろそろ寝まーす」
明日は普通に中学だから、僕は寝ることにした。
あ。
寝る前に、ID:OgataSinにフレンド申請を送っておこう。
こういう、成績に拘らない馬鹿プレイヤーは好きかもしれない。
翌日。
ゲーム機を起動したらメーラーに《ID:OgataSinがフレンド登録を承認しました》というメッセージが届いていた。
それと、ミリタリー系シューター《Battle of DutyⅡ》のゲーム内クランランキング一覧を見たら、僕の
僕が抜けて一日でランクAに降格していやがった。ざまあ!
さらに一ヶ月後。
Bランククラン《JP_Gunmans》から、クランへの勧誘が僕に届いた。
ますますランクが落ちているじゃないか!
誰が、お前達のクランに参加するか!
ID:OgataSinと組んで成績を気にせずに野良プレイする方が遥かに楽しいし。
僕はフレンドになったOgataSinと毎日楽しく遊んでいる。
今更クランに戻るつもりはない。
そしてさらに一ヶ月後。
僕にとっては、クラン追放よりも衝撃的な事件が起きた。
OgataSinが初めてゲーム内でボイスチャットをしたんだけど……。
男だと思いこんでいたけど、女性だった。
実は僕、ミリタリー系シューターにおける激レア存在の女性プレイヤーとフレンドになっていたらしい。
え、あ、いや、別に下心があるわけじゃないけど、なんか嬉しい。
同じ趣味の女性(多分、年上で大学生か社会人)と遊べるのって、なんか、いい。
陰キャ男子中学生に過ぎない僕が、リア充に一歩近づいた気がする。
こうして僕とOgataSinはオンラインで出会った。
これから二年後に僕達はリアルで会うことになるんだけど、そんなこと、当時の僕が知るはずもない。
◆ あとがき
本作は2020年12月時点でカクヨムコンに応募中です。
☆が100個溜まると読者選考を通過し、編集部による審査への道が開けるかもしれないそうです。
もし本作を気に入ってくれたら、ポイントを入れてくださると幸いです。
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