修行僧

俺が住み込みで働いている旅館は寺院の境内にあり、お寺の建物とは廊下の端で繋がっている。

旅館とお寺を隔てるのは重い防火扉。

その扉は一日に一回、決まった時間に開く。

若いお坊さんたちの入浴時間だ。お客の入らないこの時間、彼らは、扉の向こうからやってくる。


そして、この時間は、旅館で働く俺たち住み込み従業員の入浴時間でもある。


「こんばんは」

「こんばんは」


丸めた頭、白いきれいな背中が、湯船につかった俺の目の前に四つ並んでいる。


「失礼します」

「お疲れ様」


彼らの去った後には例えようのない清涼感。


そして俺に残った、いつもの、焦燥。

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