第257話 玉手箱

何故、思い出されてしまったのですか?

海の底で共に暮らせれば幸せでいられたのに。


何故、開けてしまわれたのですか?

あれほど『開けてみないで下さい』とお願い致しましたのに。


この産屋は玉手箱。

我が本性をご覧になられてしまった以上、

八尋和邇やひろわにの歯牙が山幸彦様の男を喰い千切ろうと致し方無き事。



★☆★


古事記『山幸彦と海幸彦』の『豊玉毘売命の出産』より


いや。

豊玉姫が食いちぎったとは書いてないけど、出産って命がけですし。

我が子を守る為なら自分の命さえ差し出そうって頑張っている時に、

例えそれが夫であっても、それを夫だと認識できず、

不審者認定して攻撃しても仕方ないと思うのです。


『山幸彦を食い殺してしまった』にしても良かったのですが、

彼には、息子のフキアエズが大人になる迄、海幸彦達を従え続ける仕事が残っておりますので。


まあ、ナニを食いちぎられたっていうのは、生殖能力が消失してほぼ寝たきりになるでしょうから、それは老人になったという事と同じ様なものかな~って。



つか、『玉手箱』のお題なんて、

本家・浦島太郎か、その物語に類する話以外でなんて書けないよ。

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