第151話 天国 ①

どうやら俺が死んでから106兆5800億年が経ったようだ。

あの女…薄衣うすぎぬ一枚の姿で、

刀葉とうよう樹の細い枝を跨いで、

あそこを枝でこすり慰めていた美女。


犯す事だけを考え、

体中から血飛沫が噴き出そうと、

女のいる樹を林中探し回った。


目的を遂げられもせず、俺は天国へ行くのか。

あの女のいない場所に。



★☆★


此岸で殺生、盗み、邪淫を犯し、衆合しゅごう地獄に堕ちた罪人の話。


衆合地獄には、刀葉林という場所があり、樹の頂上で美女が誘惑してくるそうです。

そして、男の罪人達は、女性を捉まえようと、刀の葉で切り刻まれながら、樹に登っていきますが、いざ頂上に辿り着くと、美女は地上に居て、又、誘惑してくるんだそうです。


この亡者は、この地獄での寿命を迎え、天国に行くと思い込んでいますが、どうなんでしょうね。

こんな煩悩を抱いたままでは、無理かな。

ある意味、106兆5800億年彼女一筋だったと言えなくもない気もするのだが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る