第145話 打ち上げ花火 ≪佐藤勲≫

その夜、東ベルリンの市民の胸に鳴り響いた大音響は、

ブランデンブルク門のエンタブラシュアの上の女神ヴィクトリアが、

騎乗するクアドリガ四頭立ての馬車の蹄の音めいていたに違いない。


空に壁はないAm Himmel gibt es keine Mauer


その2年後、夜空を染める7000発の光を背負った女神は、

壁を壊す市民達の歓喜を乗せて、自由の空へと向けて駆けていった。



★☆★


ベルリン市制750年祭典にて、秋田県大曲市の花火師・佐藤勲氏は、

「ベルリンの地上には壁がありますが、空には壁がありません。日本の花火は、どこから見ても同じように見えます。西のお方も、東のお方も 楽しんで下さい」

と仰り、翌日地元西ドイツの新聞の一面を飾ったそうです。




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