第116話 ブラックシープ。

 一番最後尾を走るブラックシープだけど、なんだか他のより一回り大きい気がする。


 作戦ではちょうど分かれ道に差し掛かるところで後ろから二頭目の鼻先に弓を飛ばして向きをずらし、群れから離れさせていくという話だったけど。


 どうかな。


 ドドドドと走るブラックシープの群れを追いかけながらあたしたちも走る。


 目標地点に差し掛かったところで、


 ビュン


 と数本の矢が連続で飛んできた。


 あれ、頭は潰してある感じ?


 左手から狙いをすまして矢を居るシルヴァたち。


 後ろから二頭目の鼻先に無事にあたり。


 頭を振って走り続けるそれの行く道が前の集団と逸れる。


 やった。成功?


 生い茂る木に邪魔をされ逸れたことに気が付かないそのブラックシープとその後ろからついていく一回り身体の大きな個体。


 あとはこの二頭を追い立てて仕留めれば狩は終了だ。




 遊び半分の狩とか経験値を稼ぐための狩ってあたしはあんまり好きじゃなかった。


 確か前世の地球の日本でもロールプレイングゲームとかの類で魔物をひたすら倒して経験値を稼いだりお金を稼いだりしないと先に進めないとかいうのがあって、そういうただただ魔物を倒す操作っていうのが嫌いで。


 もちろん、ゲームを進める上で戦うのは当たり前だけど、無闇矢鱈と倒していくあの感じ? どうにも苦手だったのだ。


 この世界の人達は生きるために狩をする。


 生活のために、食べるために。


 だから、倒した魔物の素材は無駄にしないし食材はちゃんと食べる。


 そのための狩は、しょうがないよね。みんな命懸けだし。



 そんな事を思いながら参加していた狩だったけど、あたしにはあまりまだ現実味が無かったのかもしれない。


 元世界の場合は魔獣を倒すと魔石しか残らなかったし、そういう意味でも血生臭さを感じていなかったのだと思う。






 逸れた二頭を追い詰めて到着したのは森の中にある池のほとり。


 ブラックシープは基本水が苦手なので池の中に逃げることはまずない。


 周囲を囲み弓を構える皆。


 ライフル? みたいのを構える人も。


 あれは魔石をエネルギーにして打ち出すタイプの銃かな? きっとケルタルのモリノークさんとかが使ってた魔弾とかと同じようなものかもしれない。


 ダン!


 銃声が響く。


 それを合図に皆が一斉に弓を射った。


 砂煙が舞いブラックシープが一瞬視界から消える。


 アオーン


 甲高い叫び声が聞こえたかと思うと、囲っていた人々の前にあの一回り大きな身体をしたブラックシープが現れ。


 そのままぐわっと後ろ足で立ち上がり目の前の人に襲い掛かろうとしていた。

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