第103話 皇女サーラの希望。
魔王石が弾け、リウィアさまとバルカが消えた後。
駆けつけたマルクス様に事情をお話しし、わたし達はベルクマールを後にした。
黒い玉はそのまま宙に浮いたまま触れたものを吸い込む固定のブラックホールみたいな存在で危険なため、厳重に周囲を囲み封印するらしい。
触れなければ影響が無いのが救い。その辺はどんな理屈なのかは不明だった。
試しに広範囲にわたって探知可能な魔石を放り込んでみたけれど、それはもう何処に行ったのかわからずで。
少なくともこの周囲には出口はないようだった。
大勢の死傷者を出した今回の事件は結局主犯のバルカが行方不明という事で捜査も進まず、真皇真理教との関わりも確定出来ず、だったそうだ。
まあどちらにしても真理教は地下組織で表にはおいそれと出ては来ないので、取り締まるのも難しいといった側面もあったらしい。
わたしはおとうさまにお叱りを受けたけど、結局次期公主としてベルクマール行きが決まった。
リウィアさまは公式にはお亡くなりになった事とされ、次期公主の派遣が帝国の責任として皇家にのしかかったのだ。
おかあさま、ねえさまにいさまは心配してくれたけど、公主が不在は国の根底が揺らぐとあって、決定は覆らなかった。
何故魔王石が弾けたのか、あのとき何故バルカはリウィアさまの手を掴んだのか?
謎はいっぱいだったけれど、
……バルカは自身が魔王となろうとしたのかもしれません。
そういうサンドラの言葉に、納得もした。
何故魔王石が弾けたのか、は、その前の爆発、抱えていたリウィア様の魔力、バルカの衝撃波、そういった影響なのだろうとしかわからなかった。
そして、魔王石が弾けた時、半分は外に飛び出たけれど、残り半分はリウィアさまの身体に吸収されたようにも見えた。
バルカは目当ての魔王石を確保する為に、リウィアさまを掴んだのでは、というのがサンドラの意見だった。
わたしにもう少しチカラがあれば……。
……今は、追いかけるのは無理、です……。命の保証もありません……。
……しかし……、いつかきっと……。
うん……。いつか、絶対に、リウィアさまを助けたい……。
バルカがあのまま死んでしまうとは思えない。
で、あれば。
いつかバルカがまたわたしたちの前に現れたその時こそ、リウィアさまを救うチャンスなのかも。そう、今はそう、願うしかできないけど……。
……ええ。準備、しましょう。次は絶対に失敗しないように……。
うん。サンドラ……。
そして。
魔王が復活する、という、預言がサンドラのもとに降ってきた。
わたしには、その魔王という存在に心当たりがあった。
あの時の夢、あれは公主館の中庭だったのではないか?
わたしたちが転移で最初に到着した、あの。
そして、わたしはその場に居た、のだ。
たぶん今より数年後の姿で。
で、あれば。
あれは夢なんかじゃない、予知夢の様なものじゃないか。
サンドラに話してみたけど、本当のところ、よくわからなかったけど、もしかしたらありうるかもと言われた。
……サーラなら、有りかもですよ。
って。
うう、肝心なところはそうやって曖昧に逃げられる。
もっとはっきりしてほしいのに。
でも。
うん。
わたしはきっと亜里沙ちゃんに会える。
そして。
きっと、その先に。
希望はきっとある。そう。信じて。
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