第79話 バルカとサンドラと、大魔法。

「あなたも……、気がついて居たんでしょう? アリシア」


 ——まあ、ね。でも、レティーナはレティーナだから。いつまでも瑠璃で居なくても、そう思ってたわ……。




 はう? え? ちょっと待って。


 あたしが瑠璃? どういうこと?


 瑠璃ってあのはじまりの少女、だよね?


 はうあう、頭が追いつかない……。




 っていうかカッサンドラさまも神様も、はじまりの少女の分身なんだよね?


 サンドラさまはカッサンドラさまで、アリシアの中には神様も居て。確か、そう?




 でも、そうしたら……。



 あたしの中にあった瑠璃のキオク。あれはアリシアのじゃなくてあたしの? っていうこと?



 ——ごめんね。レティーナ。混乱させちゃって。でもね、今のあなたの人生はあなたのものなんだからね? たとえ前世が瑠璃だったとしても、今のあなたはレティーナなんだから。レティーナとして生きれば良いって、わたしはそう思っていたの。


「そうよ。レティーナ。アリシアの言う通り。だからね、あなたはあなたとして生きて。そして、あなたの力でわたくしごと、バルカのレイスを浄化して欲しいの」


「大聖女さま! 大聖女さまごとってどういうことですか!?」


 そんなの!


 大聖女さまにバルカを浄化して欲しいって言われたのなら、あたしは命を燃やしてでも聖魔法、大魔法を放っただろう。


 それがあたしの生まれた証なら。使命なら。あたしは躊躇なんかしなかった。


 あたしのレイスの中にバルカを取り込んでしまえと言われたとしてもそう。


 犠牲になる? ううん。違う。


 あたしがその為にこの世に誕生したのだとしたら、あたしは喜んでこの身を捧ぐ。


 それでみんなが助かるのなら、あたしの命なんて……。


 ——バカ! レティーナのバカ! なんで自分の命犠牲にすることばっかり考えるの!


 ——そうよ。カイヤの言う通り。馬鹿言わないのレティーナ。それにサンドラもよ!?


「ごめんなさい。レティーナ、アリシア。今のバルカの妄執は、例えそのレイスを浄化して円環に還したとしても、消え去ることなく再びその妄執を持ったまま産まれてくる可能性が高いのです。だからこそ、わたくしが包み込むことでこうしてその妄執を抑え込んでいる今の状態のままレイスを円環に還す必要があるのです」


 円環。全ての生命は、すべてのレイスは、そこで溶け合い浄化され再び産まれ出る。


 だから、魔王バルカのレイスを浄化してその円環に還す事、それはおこがましいけれど、バルカを救うことにも繋がる。


 でも、だからって。


 あたしに、大聖女さまを殺せって言うの!?


 そんなの出来ない!


 出来ないよ!!

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