第80話 円環の昇華。
肉体の死、精神の死、どちらも死かもしれないけれど、精神が死んでしまったら転生することだって出来ない。
円環に還った魂はその
今までのカッサンドラさまなら自分の
「あたしに、大聖女さまを殺せと言うんですか!?」
「そう、ね」
「できません! そんな事! ひどい、大聖女さま、どうして……」
ふわっとあたしのほおに触れる温かい手の感触。あたしが流した涙をさっと拭って。
「わたくしはもう長すぎる年月をわたくしとして生きました……。本当はもう、千五百年前に捨てるつもりだったのに……。お願い、レティーナ。わたくしを円環に還してくれませんか?」
「いやです! そんな!」
「あなたの中に書き込んである大魔法、『円環の
「だって、そんなことしたら大聖女さまが……」
「わたくしの
ぎゅっと抱きしめられる感触を感じてあたしも大聖女さまを抱きしめようとした。けれど。
抱きしめられる感覚はあっても、あたしの腕は空振りするだけ。
大聖女様の実体はそこには無いのか……。
グワン、と、空間が揺れた。
漆黒の闇が晴れる。
一向にあたしを取り込めない事にバルカが痺れを切らしたのか仕切り直しをしようとしたのかはわからないけれど、黒い闇だったバルカがあたしから剥がれ、そして元の薄いグレイの空間に戻る。
目の前にはバルカの炎。
そしてその炎にまとわりつく白い鎖。
さっきよりもくっきりと見えるようになっている。
——跳ぶよ! レティーナ!
え?
——グランウッドの真上まで、跳ぶ!
待ってアリシア! あの鎖の下に大聖女さまが!
——わかってる! けど、もう待てないよ!
あたしのゲートからアリシアのマナの手が伸びる。
グランウッドの真上、その空間を掴んだそのマナの手が、グルンと空間をひっくり返した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます