第69話 真龍。
天井にまで届くかと思われる巨大なその体。
いきなり現れた? っていうか通路通れないじゃないこの大きさじゃ!
そんなこと考えている暇は無かった。目の前をギュン!と迫る大きな尻尾!
避け……、ううん、ダメ!
「みんな! 上空に逃げて!」
こんな尻尾に押しつぶされたらもたないよ!
でも、たぶん全員で上空に飛んだらそのまま尻尾を上に振り回されて終わる!
「レティ!」「レティシア!」
上空に飛び上がったカイヤとティアから下に残ったあたしに対しての悲痛な声が聞こえる!
でも!
受け止めてやる!
右手のドラゴンオプスニルを起動! あたしの目の前にエレメンタルドラゴンの頭、そんな幻影が広がる!
このドラゴンオプスニルに納められたマトリクスには、真龍、エレメンタルクリスタルのそれもあった。あたしは自身の身体に三段階のマトリクスを纏い自身の肉体を龍神族のそれに変化させ、そしてその四段階目、真龍のマトリクスを前面に顕現させたのだ。
迫りくる尻尾にがぶんとかぶりつき引きちぎる!
ギャンオーと鳴くケープドラゴンは、その千切れた尻尾を無視して前脚を振り回した。
「ウォールシールド!」
アルミナがカイヤとティアの前面にマジックバリアをはる!
ケープドラゴンの前脚はそのシールドにぶつかり動きを止める。
カイヤは自身を巨大な黒ヒョウの姿に変え、そしてその背中に乗るティアと共に動きを止めたドラゴンの首元に飛んだ。
二人の鋭い爪が分厚い鱗に覆われたケープドラゴンの喉元を切り裂いて。
カイヤ達の離脱を確認し、あたしは右腕を高く掲げて叫ぶ!
「ファイヤバーストー!!!」
右手から伸びる真龍の頭。その口が大きく開き噴き出される炎のブレスがケープドラゴンを包み込んだ!
「ちょっとやりすぎじゃない? レティ?」
はうあう。カイヤ?
「ほら、壁まで真っ赤に溶けてる。こんな狭いところでそんな大技使ったら、ボクら全員丸焼けになってたかもだよ?」
「えー、でもー……」
「わたし、とっさにブリザードウォールを唱えましたけど、一瞬で蒸発しましたしね」
はうあう、アルミナさんまで……。
「ほら、レティシアは一応あたい達のこと考えてシロに守らせてくれたしさ」
うんうん。シルヴァ・ファングも守ってくれたし大丈夫だったし……。
もふもふのまっしろな狼。シルヴァもクーンと鳴いてあたしの手に頭を擦り付ける。
「はう、ごめんねー……」
とりあえずみんな無事で良かった。
に、しても。
ここはボス部屋?
いきなりあんな魔獣が出るなんて、どういう事?
こんな、ゲームみたいな状況を作って楽しんでるの?
なんだか意地が悪いな。バルカって。
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