第68話 不思議なビジョン。
降り立ったその場所は、薄暗い洞窟のような場所であったのだけれど何故か周囲が見て取れる。壁自体がうっすらと発光している? そんな場所だった。
目の前の進むべき道は二手に分かれている。
「こういう場合は壁に手をあてて行くといいんだったっけ?」
と、ティア。
「迷路ならまあそうだけど。右手と左手のどちらにする?」
もう最近はずっと人の姿を保っているカイヤもそう言ってティアに同調する。
でも、だよ? 確かにね? 普通の迷路ならそれで出口まで辿り着けるかもだけどここはそんな「普通」じゃないし。
「ティア、カイヤ。あたしなんとなくだけどゴールがわかる気がする。感じるんだよ。だから、そういうまどろっこしいのはやめてあたしの感に任せてくれない?」
「えー? 大丈夫?」
「迷ったら終わりだよ?」
——まあいざとなったらわたしの空間転移でここから脱出しましょう。
うん。ごめんねアリシア。
「どうしてもにっちもさっちもいかなくなったら、アリシアの転移で脱出できるから。それで出直そう」
「まあ、なら良いけど」
「あたいはアリシアに任せるよ!」
「わたしは……。あなたの行動を見届けるだけですから……」
はう、アルミナさんったらまだそんな感じ。
でも。
「じゃぁこっちね!」
あたしは右側の通路に向かって歩く。ティア、カイヤ、アルミナさんの順についてくるけどなんだかこれって……。
——あは。RPGのゲームみたい。
アリシアの前世の記憶にあったゲーム? そんな感じで歩くあたし達。
これって、アリシアのキオク、だよね? そうだよね?
みたこともないはずなのにそんな地球の記憶があたしの中に浮かんでくる。なんだか不思議な感覚、かな。
うすぼんやりした洞窟の隅っこには時々スライムとか洞窟ネズミとかが潜んでいたりしたけれどその辺はサクっと倒して進む。
別に本当にゲームなわけじゃないから。経験値とかは要らないから。とにかく逃げるのは追わないでサクッと進んでいくのだ
ってはう。なんであたしこんなこと考えてる?
アリシアのキオクに思考まで同調してるの?
そんなこと考えてたらそれまでの狭い通路とは違った、ちょっとした広めの空間に出た。学校の体育館くらいの大きさ、かな?
体育館……。
あれ? なんだろうこのビジョン。
体育館の倉庫でボールの後片付けをしているあたし。
なんだかとっても理不尽なことで怒られてる?
「もう、ボールを片付けるだけにどんだけかけてるの!」
「あんた真面目にやってるの?」
「やる気がないんだったらとっとと辞めたら」
そう。
何人かの先輩に取り囲まれてそう怒られて。
あたしはそのまま部活に行かなくなった。
お父さんが癌になって部活どころじゃなくなったのもあったけど、結局そのまま中学一年生の夏であたしのバレー部は終わったのだった……。
って何? なんなのこのキオク!
「レティ! ぼうっとしてないで!」
はう、カイヤ!?
「ケープドラゴンだわ!」
え? アルミナさん?
って、あたしの目の前で大きな口を開けてこちらを威嚇するオオトカゲ? みたいな魔獣!
ケープドラゴンが現れた!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます