猫ばっかり構ってるからと宮廷を追放された聖女のあたし。聖都に魔物や魔獣が増えて困ってるからって戻ってきてと言われてももう遅いのです。守護結界用の魔力はもう別のところで使ってます！

第62話 時空震。

「サンダーブレイド！」

　稲妻が剣の形を纏ったままグリフォンの脳天に振り下ろされた。

　まともに受けたグリフォン。そのまま稲妻の光が身体を突き抜けるように下まで届く。

　あたしはトドメとばかりに棒立ちになったまま宙に浮かぶそれの脇腹めがけ剣を薙いだ。

　あと少し、届く！

　そんな距離から急降下で逃げるグリフォン。

　まだ意識刈り取ってなかったかと舌打ちし、そのまま降下し追いかける。

　左手にももう一本、氷の剣を顕現させたあたし。

　先に地面についたグリフォンがこちらに向き直り大きな口を開くそこに、その剣を投げつけて。

　ドシュ！

　っと口の奥に刺さる氷の剣（つるぎ）。

　両手を伸ばしこちらを警戒するグリフォンの脇をかいくぐり胴を右手のドラゴンスレイヤーで薙いだ。

　これで！

　振り返るとちょうどガクッと膝をつくグリフォンが見えた。

　はう。よっぽど頑丈な身体なのか傷は奥まで達してない？

「おのれ……、おのれおのれおのれー！」

　くぐもったそんな声が響く。

　怒り心頭のグリフォン。

「この俺様が！ お前らなどに！」

　そう叫ぶと両手をぐっと広げた！

　——あ！ ダメ！

　え？

　グルンと意識がひっくり返るのがわかる。

　あたしの身体のコントロールを奪ったアリシア、そのままカイヤとティアのそばまで空間を跳んだ？

　——レティーナ！ 多重結界、急いで！

　何？ と考えている時間も無くあたしは急いで多重結界の魔法術式を自分とカイヤ、ティアの周囲に何重にも重ねがけする。

　アリシアも？ 同じように魔法陣を展開している？

　その刹那、両手を広げたグリフォンの魔力が急激に膨張して周囲の空間ごと弾け飛んだ。

　激しい時空震が巻き起こる中、カイヤとティアを抱きしめて。

　何層もの結界が剥がれ飛んだのを感じたあと、世界が通常に戻った。

　霊峰山は、その姿を跡形もなく残さず消し飛んだ。