第14話 魔法を楽しみなさいって。
その昔、この世界には魔王が居た。
魔王と言っても人によっては彼を神と呼び崇める者も居たくらい、そんな神秘的な存在。
そんな魔王のカケラから生まれたのが龍神族だという逸話がある。
純粋種の龍神族は数が少なくそうそう人里には現れる事もない。人と混じって暮らす龍神族は大抵が人族の血が混じった混血、混ざりものだ。
それでも、そんな龍神族の血を引く者は普通の人とはその身体能力が違う。違い過ぎる。
世にいる超級冒険者、剣聖、そして勇者さえ、先祖を辿ればそんな龍神族の血を引く者で占められるほどだったという話。
これは何処まで真実なのかは謎だけど。
レヴィアさんがあたしにくれたこのドラゴンオプスニル。
あたしに龍神族並の身体能力を与えてくれただけでなく、その容姿も龍神族のままで。
まあ緑の髪っていうのだけでは今の世の中には居ないわけじゃないけど真っ赤な眼っていうのはほんとそのまんま龍神族の特徴で。
うん。
彼女は純粋種なのだろうな。そのマトリクスを与えられたあたしとその力の源のシズク石を与えられたカイヤ。
そのおかげでほんと助かったのは間違い無いのだけど、ね。
あの夜の一件以来、「この街には龍神族の少女が居るらしい」という噂が広まった。
時々コソコソとあたしのこと指差して噂話してる人も居るから、まあある程度その噂があたしだって言うのもバレているのだろう。
普段は琥珀色の瞳になっているあたしに直接聞いてくる人はまだ居ないけど、まあしょうがないか。
目立つのは嫌だけど聖女ってバレるよりはマシかもしれないのでそのまま放置してる。
ティアはなんだか納得してた。
そりゃあそうだよね。あれだけ色々見せてきたんだもの。
でも、それでもティアの態度が変わらなかったのが救い、かな?
ティアにまで恐れられたりしたらちょっと悲しいし。
そんなことでギルドでもなんとなく一目置かれるような感じになったあたし。
試しに通りすがりに魔獣倒したって魔石を持って行ったらあっさりマイアさん換金してくれた。
それもティアの時みたいに奥の部屋連れて行かれるでもなくその場でだよ、どうしてかな。
まるであたしだったらこれくらいの事が出来ても当たり前だよねみたいな態度?
もう。
完全に噂の本人はあたしだってバレてる感じ。
ふにゃぁって思ったけどそれでもこの状態は悪くはないかと思い直した。
これでおうち持てるまでの期間が短縮されたと思えばね。
「おはよーティア。じゃぁ今日も午前中は森に行って、午後からは魔法の訓練ね」
「おはよーレティシア。魔法の訓練は楽しみだけど、なんだか遊んでるみたいにしか感じないんだけどあたし少しは上達してるのかなぁ?」
「してるしてる。魔法はね、苦労して修行してとかそんな事するよりも、楽しくやった方が伸びるの早いのよ」
「あは。そっか。なら嬉しいなありがとうレティシア」
これはほんと。
魔法はね、それに慣れる事が肝心。考えるよりも感じる方が重要。
あたしが大聖女様に教えて貰った事。
魔法が使える事を楽しみなさいって。手にした光を自由自在に飛ばしてみたり、鬼ごっこみたいに追いかけっこしたり。そんな事して遊びながらいつのまにかあたしの魔力は増えていった。
難しい魔法陣とかは記憶の転送? そういうので直接あたしの中に書き込んでくれた大聖女様。
あなたは特別なのよ、って。そういつも言ってた大聖女様。
贔屓? とは違う。
あたしにはそれができる器があるって、普通には無理なんだって、そう言ってたっけ。
だからそういう魔法陣はちゃんと自分で覚えて貰わないといけないけどね。魔法に親しみ遊ぶ事で魔力が増えるのは間違い無いと思うんだ。
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