第4話 新しい出発。

 結局そのまま朝までその岩の上で寝ちゃったあたしたち。


 朝方ちょっと寒かったけど二人で寄り添ってたらあったかくてちゃんと寝られた。レイスの収納から毛布を出してかぶって寝てたけど、なんとかそれでちょうど良いくらい。


 寒い時期じゃ無くてほんと良かった。



 朝日が木々の隙間から差し込んで幻想的な雰囲気を醸し出している湖で、顔を洗って。


 はらりとおちる髪が綺麗なエメラルドグリーンになっているのはほんと新鮮。身体も軽い?


 って、そうか、これならもしかして……。


「ねえねえカイヤ。これならあたし、レティーナとは別人って感じで就職とか出来るかもしれないわ」


 ——ああ、そうだね。今の容姿ならいいかも? そうだ! いっそのこと名前もレティシアとかに変えて名乗れば完璧じゃない?


「そーだねー。レティシア、良いかも」


 ——じゃぁ今から君はレティシアだ。グリーンの髪のレティシア。これなら別人で通るよね。


「あは。じゃぁこのまま聖都に戻って……」


 ——ちょっと待ってレティ。昨日あれだけいろいろ当たったんだもの、流石に顔を覚えられてると思うんだ。聖都はやめて、隣の商業都市コンラッドに行かない?


 そっか。


 流石に昨日会ったばっかりの人だったらいくら髪の色変えたってバレる可能性高いよね?


 ——そうだよレティ。雰囲気は変わらないし声だって一緒なんだもの。


 うんそれに……。


 宮廷の聖女達にも見つかるかもだしね。


 うん。コンラッドに行こう! 新天地で冒険者でもしようかな?


 ——冒険者? 危なくない?


 お金貯めておうちを買うの。たぶん身寄りもないあたしを普通に雇ってくれる人もあんまりいないだろうしね。カイヤと二人でゆったり暮らせるおうちが欲しいな、あたし。


 ——そっか。それも悪くないね。




 後半はあたしも声を出さないで心の中だけで会話してた。


 カイヤは声に出して人の言葉を話す事もできるけど、今までも二人っきりの時はずっと念話で過ごしてきた。周囲から猫と話してるなんて思われるのもおかしいし、あたしも心に思い浮かべるだけでカイヤがそれを読み取ってくれるから楽?



 湖畔には果物のなっている木もいくつかあったからそれをつまんで朝食にして。


 カイヤはお魚を上手に捕まえてた。


 さてと。


 準備もできたし行きますか。


 あたしはそれまで着ていたひらひらの聖女服から普通の町娘の衣装に着替え、靴も編み上げサンダルから皮の靴に替える。


 ちょっと距離歩かなきゃだしがんばらなきゃぁ。


 普通に歩けば半日くらいで到着するくらいにあるコンラッド。商業都市というだけあって聖都よりもお店とか賑わってるらしい。行ったことまだないけど。


 あは。楽しみだ。

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