迷宮日記〜ページ2〜 なんの嫌がらせか……
迷宮を登り始めて3日ほどが経過した。
っといっても、時計なんざ無いから俺の腹時計での感覚なんだけどね。
「あ゛あ、まだなの?」゛
「うん、全然まだだよ」
嬉しそうで楽しそうな辰爾がそう答えた。
嬉しそうなのが気に食わないことは置いといても、なんか腹が立つ。
「なんで俺をここから出してくれないのかよ」
その問いに、さあなんででしょう?、と答える様子はまるで愉快犯だ。
そんな事を言っているうちに少量の煌めきが目に写った。
希望を感じたような俺の足はそそくさとその煌めきに向かって進んでいく。
スライムくんが転げ落ちた。
出口………なのか!?
そう思って進んでいくと、そこには───
「なんだよ!イノシシじゃねえか!」
もう、うんざりとした気分だ。
出口だと思ったのに、出口だと思ったのに!
「残念。そう簡単には出られなかったようだね」
落胆のため息をついていると、そんな暇はないような言い回しで辰爾が、そろそろ来るよ、と言った。
それから数秒と経たずにそのイノシシは俺に突進してきた。
炎を纏ったイノシシに当たられると痛いだけで済む───わけがねえ!
必死に避けていく。
避けてばっかじゃ倒せないことなんて重々承知の上だが、それでも今は避けるくらいしか出来ない。
「〈水化〉!」
火には水というセオリーに沿って、〈水化〉を使ったものの、設置した場所になかなかイノシシが落ちてくれない。
この設置するのにかかる時間が問題なのかもしれないな。
「どうしろっていうんだ!ぁぁぁぁ」
嘆く以外にどうしろっていうんだ!
もう勝てっこないだろ!
『〈
なんだか言い回しが特殊だけど、まあいいや。
FPSガチ勢のエイムを舐めるなよ!
「はあ!」
───早すぎて当てられねえ………。
この速さはゲームやってるだけじゃ無理だっつーの!
無理なことはせずにまた逃げに徹する羽目になった。
どうやったら倒せるだろうか?
「殺そうとしなくても、あの纏ってる火が消えたら勝手に死ぬよ?」
お!?辰爾からいい情報をもらった。
倒そうとしなくていいのなら方法が一つある。
俺を睨み、俺に突進してくるイノシシが俺の目の前に来たところで───
「待ってたぞ!〈水化〉!」
俺を中心とした範囲で、俺ごと水に落とした。
すると案の定、俺を含め俺の超間近でイノシシも落ちた。
水に使った途端にイノシシは失神して、窒息した。
これは凍死からの窒息死か?
───ここで問題が一つ。
焦って作った〈水化〉の範囲を思ったより広くしてしまったので岸まで泳がないと行けない。
俺、濡れるのは嫌いなのに、泳ぐのなら尚気持ち悪い。
今日は散々だよ。
異常化したイノシシに襲われるわ、苦手な水に浸かるわで………はあ………。
これはなんの嫌がらせか。
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