一章 セシリア王国編
第8話 エルフと…………はあ、最悪
あ゛あ゛。
どれくらい歩いたんだろう。
とてもじゃないけど、もっと歩くのはしんどいな。
「ちょっと……休憩……」
湖の一部にたどり着いたからそこで休憩しよう。
これ以上歩くのなら足が千切れるかもしれない。
それは嫌だ。
見ただけならそんなに遠かったとは思えないけど、歩いてみると本当に遠いところを目指してるみたいだ。
え?辰爾が…いない?
その理由を説明しよう!
辰爾はあの迷宮から出られない。
正確にはあの迷宮を中心に広がっている自分の魔素範囲外には出れないそうだ。
そりゃあ、昔やらかしたヤツが外を出歩かれたら困るもんな。
あんなヤツだから何かをやらかしたことにも納得できるぜ。
意地悪で自分勝手なヤツだからな。
あと200年間ぐらいはあのまま封印されたままでいいと思うけどな!
それに─────以下省略。
そう!だから俺たちはひとりと一匹──俺はひとりと数えて良いのか?もしかして匹?──、そしてスキル一つの計………なんていうの?
まあ、いないって言っても、エクストラスキル〈思念通信〉で互いに話すことはできるけど。
それにエクストラスキル〈六感共有〉で感覚は共有しているし──まあ、こっちで強制切断出来るけど──そんなに離れた感じはない。
エクストラスキル〈六感共有〉は視覚と聴覚、嗅覚に味覚と魔素感覚──何かはよく分からないんだけどね──の6つらしい。
イメージは〈賢女〉と同じ感じだからな。
それにしても遠い。
コレからまだまだ歩かねえといけないのが苦痛でしかない!
ああしんどい……。
こんなことなら国なんて探さなければよかった。
そんな戯言を言っていると、ツキミにまーたぶつぶつ言ってるゾと言われてしまう。
そんなときにバサバサと鳥が羽ばたいていく音が聞こえた。
これは…………なんじゃろな?
〈賢女〉が反応しないってことは、そんな大事じゃないんだろうな。
『まあ、そうですね。エルフが盗賊に襲われているぐらいなので?』
ん?〈賢女〉さん、それは物理的な意味で?
それとも
『前者です』
「はあ、良かった………じゃねえよ!ヤバいだろ!助けに行くぞ!」
重い足を前に出すと、ズタズタと走っていく。
疲労なんて今はどうだっていいって思えるくらいには走っている。
なんで放っておくのかな?
〈賢女〉さん!
走っても間に合わねえ!
ここからでいいや!
俺のエイム力!
「〈
微かに対象の盗賊が捉えられる程度のところでスキルを撃った。
FPSガチ勢の俺のエイムを舐めるなよ!
それにスキル〈身体覚醒〉とスキル〈名射手〉で底上げされてるし大丈夫だろうな!
撃った光はただ真っ直ぐに盗賊の頭に向かって突き進んだ。
威力を相当下げていたので頭に当たっても、迷宮の時みたいには貫通せずに打撃のように兜だけ砕いた。
その勢いでその盗賊は気絶した。
光なんだから殆ど重力の影響を受けていないのでエイムはピッタリだぜ。
よし!これなら何とかなれそうだ。
できるだけ近づくんだ!
盗賊が戸惑っている間にできるだけ間を詰めて!
「〈暴食〉!」
届け!届きさえすれば必勝の技だからな!
あと少し。あと少しで!
届いたぞ!
盗賊の魔素だけを吸い取った。
〈暴食〉ってこんな使い方も出来るから便利だよな。
殺さずに魔素だけを吸い上げる。
この世界では魔素が一定を下回ると著しく弱くなり、僅かになると気絶して、なくなると死ぬ──のが基本──らしいからな。
まあ、アンデットとか
(出会わないことを祈る)
広範囲に広げられるからこの一撃で盗賊は全員倒した。
良くやったとも思うし、やってないとも……。
「みなさ……ん!」
何という事でしょう。
このエルフたち、断片的に服が破れているではあーりませんか!
女性子には少々キツい描写だ。ゴヘ
そんな戯考えていると、すぐ後ろから騎士が馬に乗って走ってきている。
おお、援軍か!
まあ、俺が全部倒しちゃったから必要ないんだけどね。
*****
そう思っていた時期もありました。
騎士たちが来たのだからこの人たちを助けに来た人たちだ、と思っていた時期が。
いや、それ自体に間違いはないんだが、なら俺はなぜ今、騎士たちと戦ってるんだ?
まあ、戦ってるというよりはスライムの姿に擬態して逃げ回ってるだけだけど。
マジでやめてほしい。
「小癪な!なぜちょこまかと逃げ回るか!」
いや!剣で斬りかかって来てるんだからそりゃ逃げるでしょうよ!
それともお前さんは逃げない馬鹿か?
こうなったら拉致があかない!
「〈暴食〉!」
目眩がする程度まで魔素を吸えば一旦収まるだろう。
………ってか、この騎士さっきの盗賊と比にならねえよな。
でも、喰らうさ。
ヒトの姿になったりスライムに擬態したりして攻撃を躱しながらちょうどいいくらいまで吸った。
「う、クラクラする……」
膝をついた騎士だったけど、他の騎士たちも黙ってはいないみたいだ。
「おいおい、ヒトの話ぐらい聞いてくれてもいいだろうよ。何もなしに攻撃してくるのはないわ〜」
騎士十数名が重装備で槍とか剣を構えている後ろから、若そうな女性一人が出てきた。
この騎士団の団長か?
「何が人の話ぐらい聞いてくれてもいいだろうよ、なんだよ。そこの方々の服が………は、はだけているのが何よりの証拠だろう!」
センシティブなことは言いにくい性分なんだな。
同類だ。
「そっちがその気ならこっちもやるまでだ。〈暴食〉!」
全体の魔素を一気に吸っているだけあって、こっちも厳しいな。
防ぎながら無力化は中々やることが無いから手こずる。
確かに蜘蛛立ち寄りは弱いけど、その分知恵と団結力で集団で見ると、全然強い。
「チッ。やるしかないか。〈水化〉」
突進してくる騎士の足元が水へと変化していく。
為す術もなく落とされていく騎士たちは焦りにも似た何かを感じているのだろうな。
知らんけど。
「一度話くらい聞いても良いんじゃないか?どうせ、戦っても俺が勝つことは見えているだろう?」
これが虎の威を借る狐ってやつだな。
辰爾の恐ろしいオーラを借り受けた。
俺が最初に受けた威圧的なあれだな。
まあ、今回は俺が配分を調整しているから、地響きはない。
その代わり、局所的に精神的威圧を強化してやった。
嫌がらせだ。
『ユニークスキル〈
いやあ、〈賢女〉はよく役立ってくれるよね。
《《個人的にはどっかのファンタジー世界の賢者みたいに告って言ってくれたほうが分かりやすいんだけどね。
まあ、天の声も言ってたしいいんじゃない?》》
『ユニークスキル〈賢女〉がマスターの要望に応じて、進化しました。ユニークスキル〈賢女〉は、«天の声»の一部を吸収して、ユニークスキル〈
………え?天の声を吸収した?
このヒト、俺のちょっとした文句で進化しちゃったよ。
なんかごめんなさい。
『ユニークスキル〈
んー。思ったことあるんだけどさ。
スキルが増えたりするのには慣れてきたんだよね。
でもさ。今日ここで初めて〈
これは隠していていいことなのか?
『隠していたつもりはありません』
あ、声とかは変わらないんだね。
懐かしい声だし、そのままで良いけども。
いや、そのままが良いけども!
『話はあとでいくらでも出来るでしょう?まずは敵対する者どもの対処からです』
これは、辛辣なのか冷静なのか。
どっちでも〈
「で、やっぱりお前が大将だよな?ちゃんとヒトの話を聞く気になったか?」
やっとの思いで水面に出てきて地面にしがみついているその若い女性に言った。
話を聞いてもらうのにこんなにも時間がかかるとは、これは常識が成ってないのか?
はたまた常識が違うのか?
どっちでもいいか。
「聞く気になったなら全員出してやる。さあ、どうする?」
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