レイモンドの前世



 あるところに、墓守の少年がいました。


 墓守の少年は、たくさんの亡骸を丁寧に埋葬していくのが仕事でした。


 その世界では、戦争が起きているため、毎日たくさんの人が亡くなります。


 だから、仕事は尽きませんでした。


 墓守の少年は毎日大忙し。


 けれど、大事な祈りを忘れずに、一人一人を弔っていきます。


 しかし、そんな墓守の少年を好きになる人はいませんでした。


 戦争を仕掛けた国の人も、仕掛けられた国の人も平等に悼む少年を、卑怯者となじります。


 墓守の少年は、ずっとずっと一人ぼっちでした。


 彼の近くにいるものは、死んだ人だけ。


 墓守の少年は、ずっとさびしいまま、死ぬまで仕事をこなしていました。


――そんなに死者が好きなら、卑怯者のお前もそいつらの仲間にしてやるよ。


 死ぬまで、殺されるまで、一人ぼっちで。


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生まれたばかりの弟がラスボスだったので、フラグを折って折って…折りまくります! 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

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