第5話 努力の成果



 訪れた劇場の施設は、最近できたものだった。


 しかし、完成を急いだため、手抜きの工事だったらしい。


 天井の建材がはがれて落ちてくるという悲劇が起きる。


 その時弟は、皆を守るために力を使うのだが、暴走して逆に傷つけてしまう。それが設定に書いてあった悲しいストーリー。


 家族以外に死んだ人間はいなかったが、被害者のその人選が致命的過ぎた。


 弟がラスボス化する、第一歩となってしまうのだ。


 だから私は、亀裂の入った天井に早めに気が付いて、観客の避難を促した。


「みんな早く避難して! 急いで避難しないと、すぐ天井落っこちるから、もう落ちるから、ほら落ちるから!」


 なんて急かしていたら父と母に「不安をあおるのはやめなさい」と叱られてしまった。ちょっと反省。


 それでも、全員が退去する前に天井の崩落事故が起きてしまったのだが、弟がなんとかしてくれたらしい。


「ねえさまたちは僕がまもる!」


 と言って、キリっとした感じで助けてくれた。

 力をうまく制御して、落ちてくる天井の建材を脇にどけていった。

 スパルタ教育したのが報われた瞬間だ。

 さすがラスボス兼攻略対象。


 力を使うのには、特に大げさな動作や、呪文は必要ない。念じるだけ。

 ちょっと弟がキリっとしたが、周りの人間は、まさか小さな子供が不思議な力を発揮したとは思うまい。


 誰が力を使ったか分からないとはずだと思う。


「レイモンド、よくやったわね。貴方の活躍は誰も知らないけど、私はすごくすごいって事知ってるわよ」

「えへへ、ありがとうございます。姉さま、ぼくがんばりました」


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