第5話 努力の成果
訪れた劇場の施設は、最近できたものだった。
しかし、完成を急いだため、手抜きの工事だったらしい。
天井の建材がはがれて落ちてくるという悲劇が起きる。
その時弟は、皆を守るために力を使うのだが、暴走して逆に傷つけてしまう。それが設定に書いてあった悲しいストーリー。
家族以外に死んだ人間はいなかったが、被害者のその人選が致命的過ぎた。
弟がラスボス化する、第一歩となってしまうのだ。
だから私は、亀裂の入った天井に早めに気が付いて、観客の避難を促した。
「みんな早く避難して! 急いで避難しないと、すぐ天井落っこちるから、もう落ちるから、ほら落ちるから!」
なんて急かしていたら父と母に「不安をあおるのはやめなさい」と叱られてしまった。ちょっと反省。
それでも、全員が退去する前に天井の崩落事故が起きてしまったのだが、弟がなんとかしてくれたらしい。
「ねえさまたちは僕がまもる!」
と言って、キリっとした感じで助けてくれた。
力をうまく制御して、落ちてくる天井の建材を脇にどけていった。
スパルタ教育したのが報われた瞬間だ。
さすがラスボス兼攻略対象。
力を使うのには、特に大げさな動作や、呪文は必要ない。念じるだけ。
ちょっと弟がキリっとしたが、周りの人間は、まさか小さな子供が不思議な力を発揮したとは思うまい。
誰が力を使ったか分からないとはずだと思う。
「レイモンド、よくやったわね。貴方の活躍は誰も知らないけど、私はすごくすごいって事知ってるわよ」
「えへへ、ありがとうございます。姉さま、ぼくがんばりました」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます