妹は私の物をよく欲しがる

うにどん

本編

 私には年子の妹が居る。

 

 私は長女という事もあって少し厳しく育てられた反面、妹は少し甘やかされて育った。

 羨ましいと思った事はあるけど両親はよくある「お姉ちゃんなんだから」と言って理不尽に私を責めたりすることはなかった。


 そんな妹には悪い癖があった。それは。


――私の物を欲しがる事だ。


 同じ物を貰っても、お姉ちゃんの方が良いと言ってグズった。

 妹に甘い両親も流石にこの事に関しては注意していたけど最後には大泣きするので私が観念して交換をよくしたものだ。

 でもそれは小学校に上がるまでの話。

 流石に小学生、高学年となると妹も落ち着いてきて私の物を欲しいと騒がなくなった。

 私も両親も悪癖がなくなった事に安堵した。

 でも、それは間違っていたみたいだ。


 大学を卒業し社会人になって五年が経った私は大学から付き合い結婚する筈の彼を妹に奪われた。


「ごめんね、お姉ちゃん♪ 彼、素敵な人だったから惚れちゃった♪」

「・・・・・・そういう事で彼女との結婚はなしで、妹さんと結婚します」


 突然、家にやってきた婚約者の隣には一人暮らしをしている妹。

 もしやと思った直後に放たれたのが上の言葉だった。


 ショックの余り何も言えず塞ぎ込むと母が優しく「こっちに来なさい」と私を二人から遠ざけ、背後から父の二人に向ける罵声が聞こえた。


 予兆はあった。

 妹に婚約者を紹介してからというもの、彼が残業だと言って私と距離を置くようになった。

 結婚式を挙げる予定だったから、式場の下見をしたいからいつなら会えると聞いたらお前一人で決めろと冷たい態度。

 急に変った彼の態度に私は・・・・・・・・・・・・。



 上手くいったのだと喜んだ。



 時が経つにつれ妹が私の物を欲しいと言わなくなった理由、それは私の趣味と妹の趣味がハッキリと分かれたからだ。

 実用性を重視する私と見た目が可愛いものを好む妹。

 当然、プレゼントも自分好みの物になっていく。

 自分の趣味じゃない物を欲しいと言えるわけがない。

 そんな妹が目を付けたのが私の『好きな人』だった。


 小学校は同じクラスの同級生。

 中学は同じ部活の先輩。

 高校はバイト先で知り合った他校の生徒。


 皆、私が想いを打ち明ける前に妹に奪われた。

 隠していても必ず妹には特定されて好きな人の隣には必ず妹が居た。

 妹はただただ見ている事しか出来ない私を嘲笑った。


「モタモタしてるお姉ちゃんが悪いんだよ♪」


 クスクスと笑う妹に私は、もう此奴は妹でないと切り捨て、復讐してやろうと心に誓った。

 きっと妹は今度は物足りなさから私と『結婚する人』を奪うだろうと予想した。

 そして、その予想は私が無事に彼と付き合い始めた事で確定した。


 当然、婚約者であった男は復讐の為に用意した男だ。


 顔も整っていて性格も良い、エリートコースを歩んでいる婚約者だった男はとんでもない浮気野郎のモラハラ野郎だ。

 外面が良いせいで誰も信じてくれないが大学では一部の人間の間で典型的なクズ男と有名だった。

 私は何回も浮気されたし暴言も言われてきた、けど浮気は見て見ぬ振りをしてきたし暴言も耐えてきた、別れてしまったら意味がないから。

 そして、等々この日がやってきたわけだ。


 私は笑うのを堪えて必死に慰める母にバレないように泣くふりをした。


 その後、妹は勘当され、職場では姉から婚約者を奪った女として孤立し逃げるように退職、彼と結婚したものの浮気されモラハラを受ける日々で非常に荒れた生活を送っているとか。

 私はというと半年後に素敵な出会いを果たし二年後に結婚、子宝にも恵まれ平凡ながらも幸せな日々を過ごしている。


 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

妹は私の物をよく欲しがる うにどん @mhky

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説