第48話 待つ者の会話

「愛した男に背中から射られるとは」


 大きな布で覆われた遺体を睨む、漆黒の鎧に身を包むローグ。

 鼻背を横断する創傷、均等に揃えた顎髭、長年の経験を積んだ眼差しに憎しみを込めている。


「大英雄の死とは呆気ないものですね」


 銀色の長い髪を後ろで結んだ髪型、深緑の瞳でローグの背中を見つめるソフィア。


「それでも戦争終結に導いた大英雄さ」

「で、ローグ団長、この状況どうされますか? 和平協定に尽力した貴方が、王国の魔法鉱石を奪い、更に」


 ただ淡々とソフィアは闘技場、王都を見回す。

 分厚い鎧を着た王国兵士達、高価な衣装をまとう上級貴族達が血まみれとなって倒れていた。


「戦争を起こすつもりだなんて」


 ローグは手に乗せた七色に輝く鉱石を見つめる。


「それは王国の一部だろう。帝国はアルフレッド陛下以外、皆放棄している。奪ったのではなく、元々この魔法鉱石はユーズノー陛下から譲り受けるはずだった代物だ」

「陛下が? 戦争の火種になるぐらいなら帝国に譲る、と?」

「そういうことだろう」

「でしたら、帝国に戻られた方がよいのでは?」


 ソフィアの提案に、ローグは首を振って拒否を示す。


「まだやり残したがあるんでな、もう少し待たせてもらう」

「……」

「ソフィア様、リリィが危険だと言ったな?」

「えぇ、国を追放するか、処刑にするか、議論中だったけど……この有様だもの」


 ふふ、と渋く笑うローグ。

 笑われたことに不快感を表すソフィアは、ローグを見上げて睨んだ。


「申し訳ない、ソフィア様。決闘が終われば、リリィを引き取る。だから、どうかご容赦願う」

「エルマを殺して?」

「……どうだろうな」


 遠く王都の外を見つめるローグは、魔法鉱石を強く握り締めた……――。

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