第271話 おかしな勝負
出題者レニーとのお宝をかけた真剣勝負――のはずだったが、どうにもおかしなことばかりだ。
「もう! ちゃんとやってよ! 負けちゃったじゃない!」
マッスルスライムたちに怒っているレニーだが、あのモンスターの特性(延々と続く無言の筋肉自慢)を理解していたらまず使い魔として手元に置いておくわけがない。
あと、彼女のその後の対応から、恐らくマッスルスライムを呼びだして勝負させたのはこれが初めてなのだろう。
……一体、何が狙いなんだ?
俺たちはレニーの真意を掴み切れていなかった。
「ま、まあ、いいわ! 本番はここからよ!」
ひとしきり喚いた後、深呼吸をしてからレニーが勝負を仕切り直す。……けど、あの子の使い魔がマッスルスライムである以上、勝ち目はないように思えるが。
「……ちょっと待ってくれ」
「何よ」
「作戦タイムを要求する」
「さ、作戦タイム?」
俺の要求に対し、「何を言っているんだ?」とばかりに首を傾げるレニー。
「今回の勝負はこのダンジョン最高のお宝を真剣勝負だ。俺たちとしても、さっきのようなマグレ勝ちが続くとは思っていない」
「ちょ、ちょっと、フォルト! 何を――」
「イルナさん!」
俺の意図を読み取ったらしいジェシカが、慌ててイルナの口をふさぐ。いい仕事をしてくれたよ、ジェシカ。
「ふふーん! そうよね! 一世一代の大勝負なんだから、それくらい慎重な姿勢で挑むのは大切なことよ! よく分かっているじゃない!」
一方、レニーはイルナを無視して自慢げに胸を張る。
いいぞ。
いい傾向だ。
「と、ということは……作戦タイムを認めてくれるのか?」
「いいわよ! 十分だけ待ってあげるわ!」
「それだけあれば問題ないよ」
早速、俺はみんなを集めて作戦会議を行う。
――が、その作戦は競技に勝つためではなく、この空間をいかにして突破するかを考えるためだ。
「どういうつもりなのよ、フォルト」
「悪かったよ、イルナ。――とにかく、聞いてくれ。お宝を手に入れつつ、ここから脱出する方法を見出さなければいけない」
「でも、それならもう少しこの空間を調べていかないと……」
ミルフィの不安はもっともだ。
俺もそれが重要だと思っている――だから、
「いいか? 今から言う通りに動いてくれ。これなら……この空間内をくまなく調査できるはずだ」
そう呼びかけ、簡単にやるべきことを説明。
結果、
「ほ、本当にそれでうまくいくのかしら……」
「私は大丈夫だと思いますよ」
「そうですね。やってみましょう!」
イルナは不安そうだったが、ジェシカやマシロをはじめ、他のメンバーもこの作戦に乗ってくれた。
「さあ、そろそろ時間じゃない?」
ヤル気満々のレニーと三体のマッスルスライム。
よし――作戦開始だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます