第239話 足元の秘密
空っぽかと思われた部屋の中であったが、どうやら足元に秘密が隠されていたようだ。
「何かあったのか!?」
俺たちをここまで案内してくれたワグナーさんが、異変を感じて歩み寄る。そこで、俺はある仮説を話した。
「もしかしたら……この床が扉になっているのかもしれません」
「床が扉だって!? だとしたら――」
「恐らく……地下室があるのではないか、と」
俺の仮説を聞いたワグナーさんや騎士たちは騒然となる。
「この城に地下室は?」
「あ、あるにはあるが……食糧庫などがあるだけで大きくはないぞ」
「いや、ちょっと待て」
俺たちの会話を止めたのは、シェンディル国王だった。
「地下室かどうかは分からないが……この城には昔から秘密の部屋が存在しているという話は聞いている」
「本当ですか!?」
だとしたら、この下にあるのがその秘密の部屋なのかもしれない。
国王は早速騎士たちに床を入念に調べるよう指示を出す。俺たちも他に何かヒントとなるようなものがないか、手分けして探しだすことにした。
床にあった溝が、扉であるとするならドアノブがあるはずだ。
しかし、もし本当にそのような物があるとするなら、もっと目に見える位置にあってもいいと思うのだが……どこにも見当たらない。
「うーん……違ったのかなぁ……」
割と自信はあったんだが――と、その時、
「! フォ、フォルトさん!」
俺を呼んだのはジェシカだった。
目を大きく見開き、手をブンブンと振っている様子から、かなり重要な手がかりを発見したようだ。遠くから見ているだけでは、そこには何もないようだが……近づいてみてその正体が分かった。
「これって……鍵穴?」
なんと、床に鍵穴があったのだ。
「なるほど……最初の扉を開けただけじゃたどり着けない仕掛けだったのか」
「まあ、苦労して開けても最初に入ってくるのは殺風景で味気のない空っぽな空間だからねぇ。脱力して周りをよく調べてみようなんて思わないかも」
イルナの言う通りだ。
話によれば、これまで何人かの
ともかく、こいつを解錠できれば謎は解ける。
「やってくれ、フォルトくん」
「はい」
国王の言葉を受けて、俺は女神の鍵に魔力を注ぐ。
そして、地面に開いた鍵穴に差し込んでゆっくりと回した。
ガチャン、という音とともに床の扉の鍵が開く。
すると自動的に扉が開いていくのだが、
「わわわっ!?」
扉は想定以上に大きなものだったため、俺たちの足場もせり上がっていった。
急いでその場から遠ざかり、扉が完全に開き切るのを待つ。
扉はじっくりと十分近い時間をかけて開いた。
その扉の先にあったのは、
「か、階段だ!」
地下へと続く階段だった。
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