第234話 新たな依頼

 ペンドルトンの町で行われている宴会を楽しんでいると、俺たちのもとへ食堂の店主であるドワイトさんがやってきた。

 なんだか……かなり慌てた様子だ。


「俺たちに何か用ですか?」

「いや、用があるのは俺じゃなくて――」

「私が君たちを捜していたのだ」


 ドワイトさんの背後から姿を見せたのは、甲冑に身を包んだ男性。さらにその後ろには同じ甲冑を着用する男性が五人並んでいる。話しかけてきた男性は、その身なりと物腰から、恐らくどこかの国の騎士団に所属していると思われる。もっと言うと……かなり位の高い人物ではないか?


 やがて、仲間たちも全員集まってきた。

 そこで改めて話を聞くことに。


「え、えっと……あなたは?」

「私の名前はワグナー。隣国であるシェンディル王国の騎士団に所属する騎士だ」

「シェンディル王国……?」


 確か、このペンドルトンを調べる際に地図で見かけた名前だ。


「君があのドン・ガーネスを倒したという解錠士アンロッカーのフォルトくんか?」

「は、はい。そうです」


 俺を捜していた?

 ――その目的は大体察しがつく。

 俺が解錠士アンロッカーであることを知っているということは、


「解錠依頼だ」


 ワグナーさんの口から語られたその理由は、俺の想像通りのものだった。


「……どんな宝箱なのか、教えてもらっていいですか?」


 騎士団が俺の存在を捜すくらいだから……三桁後半か。でなければ、わざわざ俺を捜す必要はない。王国ってことは、お抱えの王宮解錠士ロイヤル・アンロッカーがいるはずだし。その人でも手に負えない宝箱が出現したってことか。


 ――だが、ここで俺の予想を大きく裏切る言葉が放たれる。


「我々が君に解錠依頼をしたいのは……宝箱ではないんだ」

「えっ?」


 宝箱じゃない?

 となると……ジェシカやフローレンス伯爵の娘さんのように、精神解錠メンタル・アンロックで心の中へ入り込むとか?

 それならば俺のところへ依頼をしに来る理由も分かるけど……

 

「なら、俺が解錠するのは……」

「ある部屋の鍵を開けてもらいたい」


 部屋の鍵を解錠してもらいたい――それが、ワグナーさんが持ってきた解錠依頼の内容だった。

 ダンジョン内にある隠し部屋の鍵ならば、これまで何度も開けたことがある。どちらかといえば経験のある方なので、俺としてはやりやすい依頼内容だ。


「それならば、過去に何度か経験がありますので問題なくやれると思います」

「おお! それは心強い! ならば、明日の朝に場所をこちらへ向かわせよう!」


 ワグナーさんは大喜び。

 後ろの部下と思われる騎士たちからも歓声があがった。


 よっぽど開けるのに苦戦している扉らしいけど……一体どんな部屋の鍵なんだろうか。


 

 それから、俺たちは「ドン・ガーネスとどのように戦ったのか、その経緯を教えて欲しい」というワグナーさんたちの要望に応えるため、宴会の料理を楽しみながら夜を過ごすのだった。

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