第233話 脱出完了!
最後にちょっとした波乱があったものの、なんとかあのダンジョンを抜けだすことができた。
俺たちがたどってきたルートを参考にして、マットさんたちも同じように外へと出ることができた。
「またこうして陽の光を浴びることができるなんて……」
マットさんたちは久しぶりに出てきた外の世界に感動していた。もう何ヶ月もあのダンジョンにいたんだから、当然の反応だよな。
以前とはまるで違った姿となった沼のダンジョンは、しばらくの間は閉鎖されることになるという。正体不明の扱い――以前、俺たちが潜った霧のダンジョンのように、Zランクとなるってわけか。
――というわけ、俺たちはペンドルトンの町へと帰還。
そこで真っ先に出会ったのは、
「マット!?」
「戻るのが遅れてすまない、ルーファス」
食堂に泥酔した状態で入ってきたルーファスさんだった。
マットさんと彼のパーティーは、元々ルーファスさんが所属していたパーティーだったらしく、数ヶ月ぶりの再会に涙を流して抱き合っていた。
それ以外にも、多くの冒険者パーティーが帰還した仲間たちとの再会に喜び合い、それまでどこか暗い雰囲気のあった町はすっかり様相を変えていた。
一方、俺は俺で即席の解錠屋をオープンさせていた。
先輩であるバッシュさんの価格設定を参考に、格安で解錠依頼を受け付ける。店はあっという間に冒険者でいっぱいとなり、大きな反響を得ることができた。
これこそが、旅のもうひとつの目的。
聖女ルナリア様やバッシュさんのように、人々がもっと気軽に冒険者稼業へ勤しめるための旅――解錠の旅だ。
この世界の物資の大半は、冒険者たちが持ち帰った宝箱から出てくるアイテムに頼っている。だからこそ、もっと解錠依頼がしやすい環境を作るべきなんだ。
聖都にいるルナリア様は、そんな世界を目指しているとバッシュさんやマルクスさんは言っていた。
俺もその考えに賛同する。
だから、聖都へ着くまでの間、こうして世界を見て回り、解錠士としての仕事もしていくことにしたのだ。
その日、ペンドルトンの町は夜通し活気に満ち溢れていた。
戻ってきた冒険者たちは、新しく生まれ変わるダンジョンをどうやって攻略しようか、おおいに盛り上がっていた。
「何回やっても、宴会っていうのはいいわね!」
「はい!」
イルナとマシロは皿いっぱいの料理を手にしてご満悦。
「これは……変わった味ね」
「見慣れない果物を使っていた」
「へぇ~」
その横ではミルフィとトーネがペンドルトンの町特製だという果実ドリンクを楽しんでいた。
「こちらのアイテムは身代わり帽子と言って、一度だけ魔法攻撃を自分の代わりに受け止めてくれるんです」
ジェシカは冒険者たちの宝箱から出てきたアイテムについて解説を行っていた。アイテムマニアだけあって知識は豊富であり、すっかり冒険者たちから頼られる存在となっている。
そんな中、
「やあ! 捜したよ!」
俺のもとにひとりの男性がやってきた。
「あなたは……ドワイトさん」
食堂の店主であるドワイトさんだった。
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