第222話 沼のダンジョン、攻略開始!
探索に挑んだ冒険者が姿を消すという沼のダンジョン。
その不気味な噂が原因で、近くにあるペンドルトンの町は活気を失っていた。
食堂の店主であるドワイトさんからの依頼で、俺たちはその謎の解明に挑む。
――と、その前にこの町のギルドへと赴き、クエストの申請をしてこよう。
沼のダンジョンへ入る前にやってきたペンドルトンのギルド。
例の失踪事件が尾を引いているらしく、人の数はまばらで活気がない。それもそのはずで、ギルドにいる冒険者の多くはダンジョン内で失踪した仲間を救うために情報を集めている最中。どこか悲壮感が漂っていた。
俺たちは掲示板の中から失踪した冒険者の捜索と原因究明を求めるクエストを発見すると、受付へ「これに挑戦する」と申し出る。
途端に、ギルド内の視線がこちらへと注がれる。
「なんだ、まだガキじゃねぇか」
「あんな連中に何ができるっていうんだ」
「大方、報酬に目が眩んだんだろう」
「後悔することになるぜ」
未だに仲間たちが失踪した手がかりさえつかめていないという冒険者たちは、どこか卑屈になっているような感じがした。イルナが「言いたいことがあるならハッキリ目を見て言いなさいよ!」と叫びだしそうになっていたので、登録だけ済ませるとさっさとギルドをあとにする。
入手できる範囲で必要な情報はあるし、あとは現地へ行ってみての判断だな。
町から歩いておよそ五分。
それほど離れていない位置に、沼のダンジョンはあった。
「見かけは普通のダンジョンとなんら変わらないわね」
「失踪はともかくとして、沼というくらいだから足元には十分注意していかないといけませんね」
ミルフィとジェシカの分析通り、外観に目立った変化がなくても、クセの強いダンジョンはこれまで何度も潜ってきた。むしろ、見た目の派手さというか、特徴がなく思えるダンジョンの方が、中に入ってみて凄いってことは多々ある。
とにかく、足元だけじゃなくて周りにも注意を配りながら、俺たちは沼のダンジョンへと足を踏み入れた。
十メートルほど進んでも、特にこれといった変化は見られない。
しいて言うなら、他のダンジョンよりも少し湿度があるくらいか。
「なんだかジメジメするな」
「嫌な気配ですね……」
「モンスターが出るかも」
警戒を強めるマシロに、不穏な言葉を口走るトーネ。
両者はまったく異なる発言をしているように見せかけて、実は本質的に同じことを話している。まあ、ダンジョンに入ったらどこでモンスターに襲われるか分からないので、このダンジョンに限ったことではないのだが……それを再認識させられるほどの嫌な気配が充満しているのも事実だ。
「っ!? ストップ!」
先頭を進んでいた俺は、後ろにいるみんなに止まるよう指示を出す。それが緊急事態のように焦った口調だったため、ミルフィが心配そうに尋ねてきた。
「な、何があったの?」
「沼がある……」
沼のダンジョンと呼ばれるくらいだから、沼があって当然ではあるが……問題はその大きさだ。
足元の自由を奪われそうなぬかるみは、ダンジョンの遥か先まで伸びていたのだ。
「ちょ、ちょっと! これじゃあ前に進めないじゃない!」
イルナの言う通り、ここを突っ切るのは無謀だ。
まだ探索をスタートさせてから十分足らず……そこで、俺たちは手詰まりの状態となってしまったのだ。
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