第207話 暴走する魔力
崩壊したガーネス・シティ。
だが、それは決して後ろ向きな崩壊というわけではなく、新しい時代を築くため、まっさらになったという意味での崩壊だ。
ガーネスに虐げられていた人たちは解放され、誰もが聖騎士団やカタルスキーさんたち冒険者に感謝の言葉を贈った。
――しかし、町の賑わいとは正反対に、俺たちの気持ちは沈んでいた。
再び意識を失い、うなされ続けているマシロ。
天使の息吹でなんとか回復させられないかと試みたが、これは外傷などとは違うため効果は得られず。
じゃあ、一体何が原因なのか。
ヒントはリカルドさんが知っていた。
「こいつは魔力酔いの症状に似ているな」
魔力酔い。
強い魔力が体内にたまりすぎ、逆に体を蝕むという現象。
一流の魔法使いは魔力をコントロールし、それを防ぐことができるらしいが、マシロの場合、爆発的に魔力量が増えたため、そのコントロールを覚える間もなかった。そのために、体内へ蓄積した魔力によって体調が悪化しているのだという。
このままでは最悪の事態も――リカルドさんは力ない言葉でそう告げた。
「そ、そんな……」
せっかくドン・ガーネスを倒し、真の意味で自由の身となったっていうのに……あんまりだ。
「なんとかならないのか……!」
重苦しい沈黙が流れる中――口を開いたのはジェシカだった。
「……マシロさんを救う術があるかもしれません」
「!? 本当か!?」
みんなの視線が一斉にジェシカへと向けられる。
そのジェシカは、「こほん」と咳払いを挟んでから説明を始めた。
「自分で魔力の調整ができないなら、アイテムに頼ればいいんです」
「ア、アイテム? そんなアイテムがあるのか?」
「えぇ……これです」
ジェシカはカタログに掲載されたあるアイテムを俺たちに見せる。
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アイテム名 【虹の首飾り】
希少度 【★★★★★☆☆☆☆☆】
解錠レベル 【115】
平均相場価格【5万~8万ドール】
詳細 【魔力酔いを緩和できる】
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「虹の首飾り……」
魔力酔いを緩和させることができるこのアイテム――見ると、それほど希少度は高くない。これなら、比較的入手しやすいはず。
「このガーネス・シティにはないのか?」
「て、手分けして探すわよ!」
イルナのひと言で、俺たちはそれぞれ分かれて町へと散る。さらに、事態を知った霧の旅団のメンバーや、カタルスキーさんたちも探してくれることに。その話はドンドン広がっていき、ドン・ガーネス退治に貢献したマシロを救おうと、みんなが必死になって虹の首飾りを探した――しかし、
「ダメだ……どこにもない……」
虹の首飾りはなかった。
こうなれば――ダンジョンに潜って、探しだすしかない。
「ジェシカ、この近くにダンジョンは?」
「ありますよ。しかも、ここで虹色の首飾りをゲットしたという情報もあります」
カタログに書かれている情報から、この近くにあるダンジョンで入手できる可能性があるということが分かった。
ここは悪党の巣窟ということもあり、近くに町はない。仮にあったとしても、お目当ての虹の首飾りがあるかどうかは不透明。時間をかけてそこへ行くより、近くのダンジョンで探した方が確立は高そうだ。
「よし……すぐに行こう!」
もはや望みはそこしかない。
駆けだそうとした俺たちだが、その時、
「わたくしたちも協力しますわ!」
ウィローズ率いるテンペスト。
「私たちも手を貸そう」
かつて砂漠のダンジョンでお世話になったグレイスさん率いる月影。
さらに、たくさんの冒険者たちがマシロのために虹色の首飾り捜索に名乗りをあげてくれた。
「あ、ありがとうございます!」
俺たちはみんなに深々と頭を下げ、感謝した。
再び魔力暴走が始まるまで、バッシュさんの見立てでは約二日。
それまでに、なんとしても虹の首飾りを見つけなくては。
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【お知らせ】
カクヨムコン参加中の「言霊使いの英雄譚」ですが、予定を早めて来週の12月25日(土)より投稿を再開いたします。
よろしくお願いいたします!<(_ _)>
https://kakuyomu.jp/works/16816452220998947767
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