第204話 暴走

【お知らせ】


 新作を投稿しました!


「引退賢者はのんびり開拓生活をおくりたい ~不正がはびこる大国の賢者を辞めて小国の離島へと移住したら、なぜか優秀な元教え子たちが集まってきました~」


https://kakuyomu.jp/works/1177354054896085495


 メインテーマは【スローライフ&開拓】!

 のんびりまったりしつつ、トラブルに巻き込まれてしまう主人公の明日はどっちだ!

※カクヨムコン7参加作品です。応援よろしくお願いいたします!<(_ _)>



…………………………………………………………………………………………………




 マシロの歌唱魔法が、仲間である俺たちに牙をむいた。


「きゃあっ!?」

「ちょっ!? なんでよ!?」


 突然の事態に、ジェシカとイルナは困惑。

 ミルフィ、トーネ、そしてウィローズもまた同じように「信じられない」といった表情を浮かべている。

 一方、俺たちを歌唱魔法で攻撃しているマシロは、一切表情を変化させずに歌い続けていた。しかしそれは……俺たちの知るマシロの「歌」ではない。仲間を守るために歌うことはあっても、誰かを傷つけるために歌ったことは一度もなかった。

 

 ――だが、今は違う。


 目の前にいるマシロは、確実に俺たちを傷つけるために歌っている。

 その事実を受け止めるだけでも時間がかかりそうだっていうのに、このままやられっぱなしでもいられない。


「くっ! 俺たちのことを忘れたっていうのか!」


 ショックを感じつつ、俺は破邪の盾を発動させる。

 これにより、俺の周囲には強固な防御魔法によって生みだされた、魔力の盾が展開していった。なんとかその場にいるみんなを覆る規模まで大きくするが、代償として盾の効果は薄れていく。


「フォルト! 手伝うわ!」


 こちらが防戦一方であることを悟ったミルフィが、自身の防御魔法を俺の防御魔法に上乗せさせる。回復士ヒーラーとして高い資質を持つミルフィが加わったことで、シールドは安定していった。


 とはいえ、状況が好転したわけではない。

 依然としてこちらが押されていることには変わりないのだ。やっていることはあくまでも時間稼ぎにすぎない。ここから、なんとかしてマシロを止める手立てを考えなくてはジリ貧だ。


「ぐぅ……」


 ミルフィの協力で余裕ができたと思ったのも束の間、徐々に押され始めていた。

 これが……覚醒したマシロの力なのか。

 普通の敵であれば、龍声剣でどうにかできるのに――そう思った矢先、


「フォルト!」


 突然、イルナが叫んだ。


「ど、どうしたんだ、イルナ」

「少し手荒いマネをするけど――いいわね?」

「えっ?」

「返事を聞いている暇はないから!」


「なら最初から確認しなくてもいいんじゃないか?」というツッコミを入れる前に、イルナはもう自身の考えた作戦を実行していた。


「はあぁ……」


 俺とミルフィの防御魔法で歌が遮断されている中、イルナは意識を右の拳に集中している。

 手荒いマネって……まさか、マシロを殴って気絶させようってことなのか?

 さすがにそれはどうなのかと思ったが、このまま今の状態をキープはしておけない。この状況を打開するには、イルナの言ったように「手荒なマネ」に頼るしかないってことなのか。


「準備は整った! いくわよ!」


 考えがまとまらないうちに、イルナの準備が整ってしまった。

 ついにマシロへ攻撃するのか、と視線を移動させると――そこには、その場で大きく拳を振り上げるイルナの姿が。


「お、おい! 一体どこを殴るつもりなんだ!」


 俺の声が届くよりも先に、イルナの拳が床を捉えた。

 直後、床に入った亀裂は広がっていき、やがて――崩壊した。


「わっ!?」


 ここは二階。

 だから、床を拳で殴れば、衝撃で床が崩れ落ち、下の階へと落下する。マシロの背中に生えた羽は飾りではないため、崩落に巻き込まれるということはないのだろうが……歌声を止めるには十分な出来事であった。


「! マシロの歌が止まった!」


 落下しながらも、ようやく訪れた好機を逃すわけにはいかない。


「ここしかない――テリー!」


 俺はマシロに接近するため、テリーを呼び寄せる。

 今行くからな、マシロ!

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