第147話 消えた父親を捜せ!

 子ども店主ことアメリーの父親が消息を絶った現場とされるハーシェ村のダンジョン。

 しかし、ここは領主公認のダンジョンマップに載っていないダンジョンであった――それも無理はなく、あの場所をダンジョンと呼んでいいものか、少し悩むところだ。


 原因はその規模。

 ダンジョンと呼ぶには狭くて低くて小さい。


 正直、ここでどうやって行方不明になるのかって話だが……


「全体を調査するのに三分とかからないくらいものねぇ」


 ため息を交えながら、イルナがそうこぼす。

 そう。

 俺たちはすでにダンジョンの調査を終えていた。

 結果は当然――異常なし。


 宝箱どころかモンスターさえいないこのダンジョンをこれ以上調査しようがなかったのだ。

 一応、隠し部屋とか転移魔法陣とか、これまでの冒険で得た知識をもとにいろいろと探ってみたが、それもすべて空振り。結論としては、


「……アメリーさんのお父様は、別の理由でこの村を離れたかもしれませんね」


 オブラートに包みながら、ジェシカがそんなことを口にする。

 それは最初に誰もが思いついた推測。

 しかし、健気に店主代理を務めながら父の帰りを待ち続けるアメリーを思うと、とてもじゃないが言葉にできなかった。


「……捜索範囲を広げよう」


 俺はみんなにそう提案する。

 だが、これは苦肉の策と言っていい。


 父親本人を捜しだすのは困難だが、せめてどこへ向かったのか、その痕跡だけでも見つけたかった。そして、「もしかしたらここにいるかもしれない」という可能性が出てきてくれたら、俺たちが旅の途中でそこへ寄り、真相を聞きだすという手もある。


 ……これが、今の俺たちにできる限界だ。


 提案を聞いたみんなはすぐに賛同してくれた。

 そこで、三人ずつの二手に分かれて近隣を捜索することに。


 俺とミルフィ、そしてトーネの三人は南から東へ。

 イルナ、ジェシカ、マシロの三人は北から西へ。


 この組み合わせで早速調査を開始した。




 ――数時間後。


「くそっ……あれだけ探し回って成果ゼロとは……」


 俺たちの組はなんの手がかりも得ることができなかった。


「イルナたちの方に期待するしかないわね」

「残念……」


 ミルフィもトーネも汗だくになるまで探し回ったから、息が上がっているな。そういう俺も疲労困憊って感じだけど。

 とりあえず、回復士ヒーラーであるミルフィの力で体力を回復させた俺たちは、合流地点である例のダンジョンへと向かうことに。

 すると、そこではすでにジェシカとマシロが俺たちを待っていた。

 ――って、あれ?


「ふたりとも、イルナはどうしたんだ?」

「「フォルトさん!?」」


 俺を視界に捉えたふたりは、慌てた様子で駆け寄ってくる。

 ……凄く嫌な予感がするぞ。


「何かあったのか?」

「そ、それが……イルナさんがいなくなってしまったんです」

「なっ!?」


 涙交じりに語るマシロ。


「どこでいなくなったんだ? 森か?」

「いえ、それが……」


 今度はジェシカが説明をしてくれるようだが……なぜかしばらく口を閉ざし、何も話さないまま、視線だけをゆっくりと――あのダンジョンへと向けた。


「ま、まさか……」

「そのまさかです」


 ジェシカは俺の言葉を先読みしてそう告げる。


「イルナさんは――あの狭いダンジョンの中で失踪しました」

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