第127話 新しい冒険
氷雪のダンジョンではなるべく出会わないように注意をしつつ、俺たちは朝早くから探索を開始した。
「うっわ……寒っ!?」
ダンジョンに入った瞬間、思わずそう口走った。
しっかりと防寒対策をとってきたのに……ここまで寒いとは。
「でもさぁ……氷があるのはいいとして、なんでダンジョンの中で雪が降るのよ!」
パーティーメンバーで一番寒さが苦手だというイルナが、全身モコモコのコートに身を包みながら抗議している。
そう。
このダンジョンに入って最初に驚いたのは――ダンジョン内に雪が降っているということだった。事前に、ミルフィとジェシカの調べによって発覚していたこととはいえ、実際に目の当たりにするまではちょっと信じられなかったんだよな。
「岩壁を構成する魔鉱石にそういった効力があるようです」
ジェシカは冷静にそう言うけど……サラッと流せる情報じゃないよな。
「それで、まずはどうする?」
辺りを見回しながら、ミルフィが尋ねてきた。
「とりあえず前進しよう。《テンペスト》の狙いは間違いなく【アイス・フェアリー】だろうから、俺たちはそれ以外のアイテムを回収していこう」
「分かったわ」
《テンペスト》との遭遇を避けつつ、氷雪のダンジョンを攻略する。
目標を掲げると、俺たちはダンジョンの奥へと進んでいった。
氷雪のダンジョンには、ここにしか生息していないモンスターが多い。
いわゆる、固有種と呼ばれる連中だ。
そのため、ドロップする宝箱のレベル自体はそれほど高くはなく、五体のモンスターを倒して最高の解錠レベルは22であった。
しかし、中身のアイテムは普段俺たちが見かけない物が多く、俺たちの関心を引く。特に、アイテムマニアのジェシカは瞳が輝きっぱなしだ。
「希少度としては高くなくても、クロエルの町ではあまり流通していないアイテムが多いな」
「本当に……心を震わせるアイテムとは、解錠レベルが高ければいいというものではないのですね……!!」
過去に見たことがないくらい興奮しているジェシカ。
喜んでもらえて何よりだが……そろそろ大物が欲しいところだ。
そんなことを思っていると、
「ぐおおおおおおおおっ!!」
ダンジョンの奥から、地鳴りのような雄叫びが轟く。
さらに振動が――どうやら、かなりの巨体を持つモンスターがこちらに迫ってきているようだ。
「どうやら、大物が来たようだ」
俺がみんなに伝えると、一斉に臨戦態勢へと移る。
やがて、その雄叫びの主が俺たちの前に現れた。
三メートル近い巨体。
真っ白な体毛に鋭い牙。
フロストベアだ。
氷雪のダンジョンの中では一、二を争う強敵モンスターとして有名だが――俺たちの前に姿を見せたそのフロストベアは、なぜか瀕死の重傷を負っていた。
「!? こ、これは……」
さっきの雄叫びは俺たちという獲物を見つけたわけではなく、自分の命を狙う敵から逃れていたから出た叫びだったのか。
そのフロストベアはとうとう力尽き、その場に倒れ込む。
「い、一体誰が……」
ミルフィがフロストベアへ近づこうとすると、
「近づかないで」
フロストベアが走ってきた方向から、女の子の声がした。
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