第121話 活動方針会議

 リカルドさんから提示された今後の活動方針。

《霧の旅団》としては、フローレンス伯爵からの依頼を受け、この大迷宮のダンジョンの謎を解明するためにしばらく滞在するらしい。


 しかし、俺たちのパーティーに関しては今後の活動を自分たちで決定するように言い渡された。



 その日の夜。

 俺は自分たちで設営したテントの中で、リカルドさんからもたらされた話をみんなにも伝えた。


「これから、か……」

「確かにこの大迷宮のダンジョンは魅力的ですが……長期間に渡って調査をするとなると……」

「で、ですよね……」


 ミルフィ、ジェシカ、マシロの三人は大迷宮のダンジョンにとどまることに対し、少し抵抗があるようだった。


 三人の中にあるのは、「もっといろんな世界を見て回りたい」という気持ちだろう。

 一方、イルナは無言のまま腕を組んでいた。

 何か深く思い悩んでいる様子……まあ、もしここを出て別のダンジョンを見て回るとなったら、父親であるリカルドさんとは長らく会えなくなるからな。

 俺を含めた他のメンバーも、そのことを考慮して決定的な言葉は避けていた。


 しかし……このままでは埒が明かないのも事実。

 いつかは確かな答えを出さなければいけない。


 その時だった。


「……いつまでもパパに引っ付いていてはダメよね」


 拳をガツンと合わせるいつもの仕草をしながら、イルナはそう言った。


「フォルト……私たちは別のダンジョンへ行きましょう」


 イルナは真っ直ぐ、俺を見据えて訴える。


「いいのか?」

「……パパたちはあたしが生まれる前からいろんな世界を見てきているからいいけど……あたしはまだまだ知りたいの。世界にはどんなダンジョンがあるのか」

「イルナ……」


 恐らく、俺たちの考えがそちらに向いていることをイルナは悟ったのだろう。そして、自分自身もまた俺たちと同じ考えにある――が、父であるリカルドさんのことを思うとなかなかふん切りがつかなかった。


 だが、イルナの気持ちの中にも、「もっといろんな世界を見たい」という願望はあったようだ。


「……分かった。俺たちは次のダンジョンを目指そう」


 俺はリーダーとして、みんなの意見を取りまとめた。

 ここから先、俺たちはリカルドさんたちとは別行動をとる。


 この世界に広がるダンジョンをもっと見て回りたい。

 そして――俺は世界中の解錠士アンロッカーにもあってみたいと思っていた。

 バッシュさんやフローレンス伯爵のように、ドン・ガーネスら現状の解錠士アンロッカーのやり方に疑念を抱いている者はいるはず。そういう人たちと協力体制を取れたら、少しずつでも世界を変えていける。


「そうと決まったら、明日にはギルドを訪ねて新しいダンジョンの情報を集めないとな」

「せっかくだから、今度は今までよりも遠方のダンジョンに挑戦してみてもいいんじゃないかしら」


 ミルフィの提案に全員が「賛成!」と声を合わせた。

 こうして、俺たちの新しい旅が始まった。

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