第71話 深まる謎

 塔の三階で発見した、天井にある文字。

 かなり高い位置にあるため、地上からその文字の全文を解き明かすことは不可能であった。

 とりあえず、文字の形状は書き写せた――が、


「誰か、読める人いる?」

「「「「…………」」」」


 天井に書かれている文字を読める人は当然いない。

 他三人はともかく、ジェシカには期待していたが、

 

「恐らく、古代文字の一種と思われますが……これは見たことがありませんね」


 古代文字自体には知識があるようだが、肝心のここで使用されている文字は解読できないようだった。


「でも、あの文字がお宝に関係しているっていうのは間違いなさそうよね」

「少なくとも、ここがどんな部屋かくらいは分かるんじゃないかしら」

「それが分かるだけでもだいぶ違いますね」


 文字の解読に乗り気となってくれたのはいいことだが……これは本当になんなんだろうな。ヒエログリフの類のようだけど、法則性がないように思える。


「こっちは鳥に見えるわね」

「じゃあ、これは船でしょうか」


 ミルフィとジェシカが早速解読を開始。

 だが、いかんせんパターンが少なすぎる。

 文字の種類が増えれば、それだけ解析しやすいのだ。

 とりあえず、ふたりにはそのまま解析を続けてもらい、俺とイルナとマシロは再び辺りの探索へと乗り出す。


「でも、探すなら天井の方がいいんじゃない?」

「天井を?」

「近くで見たら、また別の発見があるかもよ?」


 ふむ。

 イルナの言うことも一理ある――って、待てよ。


「……二階だ」

「えっ?」

「二階にあるお宝の数々は、塔を作った人たちが実際に暮らしていた頃の文明レベルだったはず」

「! もしかしたら、二階にあるアイテムの中に似たような文字があるかもしれないというわけですね!」


 さすがはマシロ。

 こちらの考えをしっかり拾ってくれたな。


「そうと決まったら、二階に戻って探しましょう!」

「そうだな。行こう!」


 俺たち三人はそのことをジェシカとミルフィに告げて二階へと向かった。




「おかしい……」


 二階にあるアイテムの山を前にして、俺たちは苦悩していた。

 アイテムをよく調べると、狙い通り、文字らしいものを発見――ここまではよかったのだが、天井に書かれているものとはまったくことなる形状だったのだ。


「どういうことなの……?」


 イルナが不思議そうにこちらへと視線を移す。

 ――って、言われても、俺だって歴史の専門家ってわけじゃないんだ。そう簡単に答えなんて出ないよ。


「……考えられるのは、どちらかが偽物か……或いは、このアイテムを作った文明と塔を作った文明がまったく異なっていたということか――っ!?」


 その時、俺の頭にある閃きが思い浮かぶ。


「もしかしたら……」

「えっ? 何?」

「何か見つけたんですか?」


 イルナとマシロも、俺の異変に気づいたようだ。

 

「イルナ、マシロ」

「な、何?」

「なんですか?」

「俺たちは――とんでもない思い違いをしていたかもしれない」


 そう。


 思い違いだ。

 発端は俺なんだが……おかげでそのミスにも気づけた。



 天井にあったアレは恐らく――文字じゃない。

 

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