第57話 ミーティング

 その日の夜。


 遠征用テントをダンジョン近くに設営し、今日からしばらくここでキャンプを張ることになった。

 そこで、二手に分かれていた俺たちはそれぞれの活動を報告するため、集会用に設置されたひと際大きいテントに集まっていた。


「さて、まずは……ダンジョンの報告から聞こうか」

「分かったわ」


 アンヌさんが昼間の活動についてリカルドさんに報告。

 やはり、塔の周辺にはかなりレベルの高いモンスターがうろついており、フローレンス伯爵が送り込んだ第一調査班はそこを突破して塔に近づくことができなかったようだ。


 実力的に、俺たちならそこをくぐり抜けることができるだろう。

 問題は――スタミナだ。

 何せ、敵の数が多い。

 エンカウント率が高いため、塔にたどり着く前にかなり消耗してしまうことが懸念されていた。


「となると……塔へ続く道を作るために、周りで派手に暴れてモンスターを引き寄せておく必要がありそうだな」

「なるほど。モンスターたちの気がそちらへ向いている間に、本命部隊が塔内部へ突入する、と」

「その通りだ」


 リカルドさんとエリオットさんは作戦を確認。

 ふむ。

 その作戦でいくなら、塔へ向かって進む本命部隊は責任重大だな。

 ここはさすがにリカルドさんたちの部隊が行くのかな。


「塔へ最初に入る部隊は――フォルト。おまえたちに任せた」

「「「「「えぇっ!?」」」」」


 俺を含めた五人全員が驚いた。

 しかし、エリオットさんやアンヌさん、それに他のみんなも割と平然としている。

 理由はリカルドさんが説明してくれた。


「龍声剣、破邪の盾、天使の息吹、聖女の拳、炎神の弓矢――これだけのアイテムを揃えているパーティーなんておまえらくらいだぞ?」

「そ、それは……」

「自信を持っていけ。おまえたちはもう十分強い」


 リカルドさんはそう言って笑い飛ばしているけど……指名された俺たちはプレッシャーだ。


 ――が、同時に好奇心も湧き上がっていた。


 あの塔の中には何があるのか。

 どんなお宝が眠っているのか。


 それをこの目でみたいという気持ち――どうやら、他の四人も同じ考えのようだ。


「フォルト……あのさ……」

「分かっているよ、イルナ」


 何を言いたいのか、すぐに分かった。

 それを、俺はパーティーの代表としてリカルドさんに伝える。


「その話……やります」

「よし! おまえならそう言ってくれると思ったぜ」


 周囲から歓声があがる。

 ポッと出の俺やミルフィが大役になって、よろしく思われないかもしれないと危惧したのだが、それは杞憂だった。

 みんなが「頑張れよ!」、「無茶はするな!」、「期待しているぜ」と声をかけてくれる。

 おかげで、緊張がほぐれた。


「そうと決まったら早速ルート確認だ。アンヌ、それにフォルト、ダンジョン内の詳しい様子を教えてくれ」

「了解」

「はい!」


 段取りは決まった。

 ダンジョン内に建てられた謎の塔の秘密を探るため、霧の旅団は始動する。


 その中心に、俺たちがいる。

 つい数ヶ月前の生活を思い出すと、まるで今の状況が夢の中にいるような感覚だ。


「やるぞ……!」


 闘志を胸に秘めて、俺たちの塔攻略が始まろうとしていた。

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