第46話 戦果報告と来訪者

 砂の聖窟での成果は上々だった。


 デザートオクトパス撃破の報酬は大きな銀色の宝箱。

 中身は魔法の素がなんと四つ。

 属性は炎、水、風、地という欲張りなセットだった。

 それらを龍声剣に食わせてさらに強化。

 これからがますます楽しみになるな。



 

 総合的な調査結果としては、大型のモンスターが多数出没する――ということで潜ったパーティーの意見はほとんど合致していた。


 まとめると、砂のダンジョンの性質として、現段階では「通常モンスターよりも大型モンスターが多数出現するが、その分、倒した際にドロップする宝箱は高レベルの物が多い」という上級者向けであるということが判明した。


 調査は今後も継続的に行われていくとのことで、ワルドさんからも「これからも調査に協力をしてほしい。その都度、きちんと報酬は支払う」とオファーを受けた。

 俺たちとしても、報酬がもらえて宝箱も入手できるその案件は、今後も喜んで受けていきたいという旨を伝えた。

 それは同時に、しばらくはこのゼオ地方へ腰を据えるというパーティーの意向表明でもあった。


 街へ戻ろうと帰り支度をしていると、周りからの視線が潜る前とかなり変化していることに気づいた。


「あいつら、年齢こそ若いが、実力は本物だぞ」

「フランさんやが認めだけはあるな」

「やるなぁ」


 聞こえてくるのは前とは正反対の高評価ばかり。

 そして、俺たちをフォローしてくれた老紳士冒険者も、


「見事な腕前だった。感服したよ」


 と、握手を求めてきた。それだけでなく、


「君たちには……お礼を言わないとな」

「お礼?」

「そうだ。実を言うとな。私は今回の調査を最後に、冒険者を引退して隠居生活をするつもりだったのだ」

「そ、そうだったんですか」

「だが、君たちの頑張りを目の当たりにして……ダンジョンへ潜り、冒険することの楽しさを思い出した。もう一度、初心に帰ってダンジョンと向き合ってみようと思う。こんなに情熱的な気持ちになるのは久しぶりだ。なんだか、若返った気分になったよ。次に会う時は宝箱を巡る競争相手としてだ。では、また」


 燃え尽きようとしていた冒険者としての魂が、俺たちの戦いぶりを見て再燃したという老紳士。彼は満面の笑みで俺たちと再会の約束を交わして立ち去った。

 ……これは、とんでもないライバルを起こしてしまったみたいだ。

 

「さあ、帰りましょう、フォルト」


 ミルフィの声に振り返ると、みんなすでに準備完了だった。

老紳士の背中を見送ったあと、俺たちも砂のダンジョンをあとにした。


  ◇◇◇


 宿へ戻ると、リカルドさんたちと合流。

 すでに改装工事は終わったらしく、明日は一日を使って移動が行わるとのこと。

 

「それにしても、おまえたちもすっかり有名人になったじゃないか。もうこの街では知らないヤツの方が少数派になったよ」

「そ、そうなんですか?」

「ああ。その効果もあってか……今日、意外な人物が俺たちを訪ねて来たよ」

「意外な人物?」


 俺が首を傾げると、横に座るアンヌさんが補足情報をくれた。


「あなたたちが砂の聖窟へ潜っている昼間に訪ねてきたのよ――バッシュ・ハンプトンって王宮解錠士ロイヤル・アンロッカーが」

王宮解錠士ロイヤル・アンロッカー……」


 それって、確か解錠士アンロッカーの中でも実力上位の者しかなれないっていう人だよな、確か。


「向こうにも、おまえさんの評判が届いているみたいでね。『最近何かと名前を聞くフォルトという解錠士アンロッカーが君たちのパーティーにいると聞いたのだが、今はいるか?』ってね」

「今日は街外れのダンジョンに潜っているって教えると、少し残念そうにしながら帰って行ったわ」

「そんなことが……でも、どうして俺に?」

「たった数日でここまでの成果を挙げるあんたたちに興味を持ったんじゃないかしら? なんにせよ、彼に特別視されているのは間違いないわね」


 アンヌさんはそう言うけど……特別視、ねぇ……。

 な、なんか不安になるなぁ。


「その人、この辺りに別荘を持っているらしいの。休暇を利用してしばらく滞在するって言っていたわ。興味あるのなら明日にでも訪ねてみる?」

「そうですね……」


 王宮鍵士ロイヤル・アンロッカーの突然の訪問。

 あまりいい予感はしないけど、会うだけ会ってみるかな。

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