斑模様の独占欲
ありえない事は知っている。ときどき距離感を感じると評した方が可笑しいのかもしれない。こんなに近い場所にいるのに、こんなに近くで笑ってくれてるのに。
「明彩さん、好き……」
障害は多かったが嫁いでくれた妻は、頬を染めて言ってくれるのに。明彩の一番は言うまでも無く、彼女だ。妻しか見えないし、妻しか居ないと思ってる。けど、真ちゃんは違う気がする。いつか、また『さよなら』を言われそうで。遠い所に行ってしまいそうで。そんな不安はどうすれば消えるのだろう。
大切にしたいのに滅茶苦茶にしてしまいたくなる。矛盾した、身勝手な感情を持て余して、妻が見えないところで笑うしかない。本当に、彼女は自分が知らなかった感情を引き摺り出すのだから性質が悪い。
好きで、好きで、仕方が無い。それをどう伝えていいのかさえも、結婚した今でも全然わからない。一緒にとけあえてしまえば、こんな事はないだろうに。そうすれば、彼女の考え方も、気持ちも全部伝わってくるのだろうか。
柔らかな口付けも、暖かな抱擁も、甘い言葉も全て分け合っているというのに、絶対的な距離が作る不安が、あの日の自分を思い出させる。
「匣に入れられればいいんだけどね」
空しい独り言も、
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