モテすぎる悪友が鬱陶しいので、彼女を作らせて黙らせたい

梨本 和広

1章 桐田朱里と蘭童殿

第1話 告白

「あの、その、忙しいときに呼び出してごめんなさい!」


僕こと廣瀬雪矢は今、2つ隣のクラスの女子生徒から呼び出しを受けていた。

場所は階段と屋上を繋ぐちょっとした踊り場、開場されていない屋上に来る人などいないから、公共の場といえど現在2人きりである。

ちなみに、教室で堂々と呼び出されたわけではなく、廊下ですれ違ったらいきなり声をかけられた。それだけでも、この状況をいかに内密にしたいかが伝わってくる。


「忙しくはないんだけど、名前なんだっけ?」

「……桐田朱里しゅりです」

「ああうん、そんな顔してるね。覚えた覚えた」


何やら哀しそうな表情を浮かべているような気がするが、当然僕は気付かないふりをする。


「それで、僕に話って?」


こんなテンプレにテンプレを重ねたような展開、察しが悪いとよく言われる僕でもこれから何が行われるか簡単に推察できる。

そう、これは告白。学生たちの青春を彩る愛の告白に違いない。僕は何度も、今日のように女子から一対一で話すことを求められてきた。

その経験が言っている、今日もまたお前は告白をされるのだと。


「あの、えっと、その……」


僕の言葉に動揺した桐田朱里は、案の定頬を赤らめながら言葉を詰まらせる。どうやら最後の勇気が出てこないらしい。

ははは、そう緊張するでないさ。僕なら慈愛の心を持って待ち続ける。君が勇気を振り絞るその瞬間までずっと。


そんな僕の思考回路が伝わったのか、桐田朱里は覚悟を決めたように僕と眼を合わせ、両手を前に差し出した。

握られていたのは、真っ白にワンポイントだけシールが貼られた手紙。これを差し出されたということはつまり、結論は1つしかない。



「これ、青八木君に渡していただけませんか!?」



これは、こんな感じに僕が巻き込まれる他人任せのラブコメである。

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