第25話 満月由美子

今日も大学が終わってスーパーへ食材を買いに行った。

たまには贅沢しようかなという気分になって奮発していつもより良い肉を買おうかと一瞬頭をよぎったけど、思いとどまった。

おっと……。浪費はだめだな。

こういう細かいところで節約しないとな。


買い物を終えて帰っていると、帰り道に前を通る書店に何やら行列ができていた。


なんでこんなに行列ができているんだろうと思って覗いていみると、ポスターを見つけた。


満月由美子の書籍が発売されて、サイン会のイベントがあったみたいだ。


そうか。

テレビに出てたのは、本の宣伝の為か。


しかしまあ……

神出鬼没の占い師が近所の本屋でサイン会とはね。


そしてサインをしてもらった女性が満月由美子に、私はいつ結婚できますかと尋ねていた。

満月由美子は、今年出会った男性とスピード婚しますよと言っていた。

女性はきゃーっと声に出して喜んでいた。


なるほど。軽く占いもしてくれるのか。

ちょっと本買って俺も占ってもらっちゃおうかな。

せっかく本人来てるしな。


満月由美子の本を買って列に並ぶ。

仕事の事を聞く人やら健康の事を聞く人だったり、人には色々気になる悩み事があるようだ。


ついに俺の番がきた。

満月由美子にサインを書いてもらい、俺は聞いてみた。


「俺、今大学生なんですけど、自分が何やりたいのかわからないっていうか……。何が向いてるんだろうってずっと考えるんですけど思いつかなくて……。俺、何したらいいんでしょう?」


「役者なんていいと思いますよ。役者で食べていくのは厳しいかもしれないですが、役者をやることであなたの人生のプラスになることは、とても多いですね。運気も向いてきます」


「えっ、役者ですか……。なんかすげー意外な答えだなー。ありがとうございます」


「それから何やら、あなたの近くから強大な力を感じるんですが……。これは……何?……あ、いえ。ごめんなさい。気のせいかも」


やべ……。

これってもしかしてアルのことじゃないのか……?


「えっ……な、なんだろうー。あはは、ありがとうございました」


満月由美子は、まさかアルの存在を薄々感じ取ったのか?

アルも人間にしては凄いって言ってたしな。


何かお互いに通じるものがあるのかもしれないな。



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