第15話 チャンス到来

今日は来てるかな?

またあの子がいないか一番後ろの席を探してしまう。


いた!!あの子だ!!

自然な感じを装って、隣の席に座る。

よし、完璧だ。不自然じゃないはず。

チラッと横目で見る。

やっぱり可愛い。

隣で顔が見えただけでもう満足。

話しかけるなんて俺には無理。


しかし予想外なことが起きた。


「あの……すみません」


ええ、話しかけられた。

ど、ど、どうしよう。

横目で見てたのバレたかな。

怒られるかな。

うわー、これはまずい。


「えっ、あっ、は、はい……」


「先週の授業って来てましたか?」


「はい。来てました」


「迷惑でなかったら、よかったらノート見せてもらえませんか?先週、風邪ひいて熱があって休んじゃって……。友達も誰もこの授業受けてないから……」


なんだ、そういうことか。

よかったー。

チラチラ見てくるなって怒られるかと思った。


「ああ、はい。いいですよ。これが先週分の授業のところです。どうぞ」


ルーズリーフを外して女の子に渡してあげる。


真面目に授業受けててよかった。

まさかこんな展開になるとは。


「ありがとうございます。ごほっ……ごほっ……」


咳がまだ出ていて苦しそうだ。

まだ完全に風邪治ってないのかな。


「あっ……あの……」


「はい?」


「のど飴あるけど食べますか?咳出てるみたいだし」


「ありがとう。じゃあ遠慮なく……いただきます」


スーパーの福引の末等、グッジョブ。

末等でよかった。


講義中、彼女は授業を聞きながら、先週分の俺の書いたノートを自分のノートに写していた。

彼女は真面目な子なんだな。


講義が終わり、彼女がまた話しかけてきた。


「ノートありがとうございました。あとのど飴も助かりました。この授業、私には内容が難しくて、聞き逃したらますます訳がわからなくなってしまうから・・・」


え、そうかな。

鬼崎の授業に比べると全然簡単だけどな。


「え、そうかな。鬼崎の授業に比べると全然簡単だけどな」


口に出ていた。


「鬼崎って……。尾崎先生のこと?あはは、やっぱり皆、鬼崎って呼んでるんだ」


笑った。

天使かよ。マジ天使かよ。


「前にギリギリ1分前に滑り込んだことがあって、ほんとに危なくてさ……」


「あはは、それはやばい!!」


話せてる。

俺、女の子と話せてるよ。

しかもこんな可愛い子と話してる。やばい。

もっと話したい。

色んなことを話して仲良くなりたい。


「あ、あのさ!!加藤先生の授業、わからないとこあったら言ってよ。俺、教えるから」


「ほんと?ありがとう!!」


「えっと、名前なんていうの?」


「水野です。水野茜っていいます」


「俺は大下です。大下彰です」


「大下君だね!ありがとう。それじゃ、また来週」


「またね」


最高だ。

こんな展開、全く予想してなかった。


「アル、ただいま」


【あら、良いことあった顔ね。あんた、分かりやすすぎるわよ。例の子と話せたの?】


「話せたよ。というか向こうから話しかけてきたんだ」


【どういうことよ。早く説明しなさいよ】


「わかった、わかったよ。そう焦るなって」


一連の流れをアルに説明した。


【なるほどねぇ。それで都合良く向こうから話しかけてきたわけね】


「そうなんだよ。また来週って言われちゃったよ」


【せっかくのチャンスじゃない。しっかりやって仲良くなりなさいよ】


「ああー、来週の講義が待ち遠しいよ。あっ、そうだ。加藤先生の授業内容、復習しておこう。わからないところ聞かれても大丈夫なように」


【他の授業もそれくらい熱意があればいいのにね】

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