第12話 洗脳

俺の部屋に泥棒、いや、ほぼ強盗になるのかな?

まあどっちでもいいや。泥棒が入ってくるという大事件があってから数日。


大学での講義が終わり、マンションへと帰ってきた。

ポストを見ると何かが入っていたが、まあ後で見るとしよう。


「アル。ただいま。そういえばさ、あの泥棒、目が覚めたらスタンガンみたいなもの食らったとか警察の取り調べで言うんじゃない?まずくないか?」


【ああ、あんたが滑って転んでって説明してる時に、あたしがあの泥棒の記憶を自分で滑って転んで頭を打ったように書き換えておいたから心配しなくてもいいわ】


「え、精霊ってそんなこともできるのかよ」


【あら、あたしに不可能はないわよ。その気になったらあんたが寝てる間にあんたの恥ずかしい過去を覗き見たり、記憶を書き換えたりすることもできるんだから】


「何それ、超怖いんだけど」


【例えばそうね……。あんたが小学生の時、学校の帰りにトイレに行きたくなったけど家に帰るまで間に合わなくて・・・】


「あー!やめろー!それ以上言うな!!」


【何よ、ここからが面白いところじゃない】


それは思い出したくない記憶だ。

不幸中の幸いだったのは、知り合いの誰にも見られなかったことだ。

何を見られなかったのかは、決して誰にも言いたくない。


あ、そうだ。

そういえばポストに何か入ってたな。


「えーと、なんだ。あなたは神を信じますか?信じる者は救われます・・・だってさ。宗教の勧誘じゃないか。一人暮らしの大学生には、結構こういう案内来るみたいだから気を付けなよって、母さんが言ってたな」


【あんた単純だから、そういうのにすぐ引っかかりそうだもんね】


「いや、俺は神様とか信じてないし。あとついでに精霊も信じてなかった」


【ほほほ、敬いなさいよ】


「そうだ、アル。お前の洗脳する力で人々の記憶を書き換えて、俺と精霊教でも作るか!」


【冗談でしょ?あんた世界征服でもするつもり?】


「冗談に決まってるだろ」


【……でもね、いつかはあんたとお別れする時がくるわ。……その時は、あんたの記憶からあたしとの思い出や記憶を全て消すわ】


「えっ?」


【冗談よ。冗談には冗談で返すのがあたしの流儀よ】


「くそー、何だよもう。ビックリさせやがって。さーて、夕飯でも作るかな」


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