第10話 プリズムクエスト

長く感じた一週間が終わり、また日曜日がやってきた。

特に予定もないし、大学の課題もないし、やることもない。

時間はたっぷりある。遊び放題だ。

最近はオンラインゲームもやれてなかったし、久しぶりに堪能するとしよう。

パソコンのスイッチを入れた。


【あら、パソコンで何か調べものでもするのかしら?】


「オンラインゲームするんだよ」


【あんた、また夜遅くまでやるつもりじゃないでしょうね】


「今日は日曜日なんだからたっぷり堪能しないとね」


【またエムピーが足りない!回復!回復!ってバカみたいに叫ぶのかしら?】


「うるさいな。プリズムクエストめちゃくちゃ面白いんだぞ」


【何よ、プリズムクエストって】


「これだよ」


俺はアルに公式サイトを見せてやった。

光の時代がやってくるというプリズムクエストのキャッチフレーズの画面が出てくる。


【ふーん。光の時代がやってくる……ねぇ】


「そういえばさ、このゲームで火の精霊とか出てくるんだけど、火の精霊とか水の精霊っているの?」


【あんたバカなの?そんなのいる訳ないじゃない】


「いや、なんかいそうじゃん」


【じゃああんたに同じこと聞くわよ。火の人間っているのかしら?】


「いる訳ないだろ。人間は人間だよ」


【精霊も精霊よ】


「いや、精霊は特殊すぎるだろ。精霊ならいそうだろ」


【あんたのイメージを勝手に押し付けるんじゃないわよ】


なんだ、いないのか。絶対いると思ったのに。

まあいいや。今はプリズムクエストだ。

この間は、武器を作るのに必要な素材を集める為にクエストに出かけてたんだっけ。

ここのクエストのボスが強くて困ってたんだよ。

回復アイテムをたくさん持っていった方がいいな。

あー、お金が足りないや。

仕方ないからそこらへんのモンスターを倒してお金を稼いで……


【しかしあんた。ゲームになったら集中力があがるわね。その集中力をもっと他に生かしなさいよ】


「うるさいなー。あっ、アル。火の精霊でてきたぞ」


【なによ、その変なキャラクター。精霊をバカにしてるの?】


「まさか本物の精霊は、黒猫だとは誰も思わないわな」


【可愛らしさがないわね。ちょっとゴツい感じじゃない。精霊を全然わかってないわね】


「仕方ないだろ。実際に精霊見た事がある人はいないんだから」


【まあそれもそうね。でもこの絵は可愛くないわ】


「おっ、そうだ、アル。お前を見せ物にすれば、もしかしてかなり儲かるんじゃないか」


【それは無理よ。あたしの姿はあんたにしか見えてないんだから】


「えっ?そうなの?心の綺麗な人間にしか見えないっていう?」


【自惚れてんじゃないわよ。あたしの力であんた以外の人間には見えなくしてるのよ】


「じゃあ俺がアルに初めて会ってから色んな人に精霊が水槽の中にいるって騒いでたら……」


【そうね。頭のおかしい子だと思われてたわね。よかったわね】


「そういう大事なことを今更言うか?」


【だって聞かれなかったから】


「…………」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る