前線へ

「ありがとう。シン殿。君のおかげでリーゼは救われたよ。君がいなければリーゼはどうなっていた事か。ううっ」


 帝王ロイヤルは涙を流していた。


「やはり君で正解だった。遠慮なくリーゼを貰っていってくれ」


「ははっ……」


 とても遠慮しますともいえる雰囲気ではない。


「昨日見た通り、魔王軍の連中は手練れだ。人間では及ばないような秘技や超常的な力を使ってくる。だが、シン殿。そして勇者パーティーの諸君ならばその連中を打倒する事もできるはずだ。諸君らの健闘を祈る」


「「「「はい」」」」


 俺たちは帝王に見送られ、前線へと向かう。


「ところで帝王、前金の金貨200枚なんですけど」


「そうだったな。受け取れ」


「わーい!」


 マリサは金貨200枚を受け取った。


「ぬっしっし! これだけあればまた一勝負できるわっ!」

 

 マリサは笑みを漏らす。


「ギャンブル依存症ってなかなか治らないんですね」


 ユフィは嘆いた。


「没収だ!」


 俺は取り上げる。


「えええーーーーーーーーーーーーーーーーーー! なんでよーーーーーーーーーーー! ダーリンのけちーーーーーーーーーー! 少しくらい! 少しくらい賭けたっていいじゃないのーーーーーーーーーーーー!」


「前博打で無一文になったのを忘れたのか!」


「ぐっすん」


 マリサは涙ぐんだ。


「それではお父様、行ってまいります」


「おう。行ってこい」


「はい」


 改めて俺たちは前線へと向かう。


 ◆◆◆


 俺たちは荒れ果てた荒野に来ていた。


「ここに大隊長がいるはずです。あっ、いたいた! アルバート大隊長!」


「おおっ! リーゼロッテ姫ではありませんかっ」


 強面で眼帯をした初老の男であった。彼が大隊長らしい。


「大隊長。戦況はどうですか?」


「いやいや。なかなかに魔王軍が手ごわく、時間を稼ぐのが精いっぱいであります。しかも相手は一人だというのに」


「一人?」


「一人とは言っても精霊を使役しているのですよ。そのモンスターみたいなのがまた強くて。ほら、また現れましたぞい」


「ぐわあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 兵士の悲鳴が響く。


 どーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!


 けたたましい音とともに火柱が立った。


「なんですか? あの炎は」


「どうやらその精霊が巻き起こしている炎らしいんですよ。相手が精霊なものでなかなか有効にダメージを与えられないのです」


「行ってみるか」


「ええ。行きましょう」


「他にも何体か精霊がいてにっちもさっちもいかんのですよ」


 アルバートは嘆く。


 俺たちは前線へ行った。そこには四体の精霊がいた。精霊というよりは召喚獣のようにも見える。


「どうする?」


 一体ずつ倒していると時間がかかりそうだ。


「一旦、別れましょう。一体ずつ倒していると時間がかかるわ」


「けど、大丈夫か?」


「いつまでもダーリンにおんぶにだっこじゃいられないわよ」


「そうそう」


「……そうか。ならそうするか」


「それに、新しいジョブにもなったし、装備も新調したし、腕試ししたいのよね」


「俺はあの燃えているやつを倒す。お前たちは適当に他当たってくれ。2、2で別れろ」


「「「はーい」」」」


 俺たちは一旦パーティーを分かれた。ソロクエストになった。


「ぐっはっはっはっはっ! 聞き捨てならぬなっ! 小僧! 今の発言! 我は炎の精霊の王イフリートである」


 真っ赤に燃えている魔人が話しかけてくる。


「そうか……」


「たった一人で何ができるというのだっ! 食らえ! ヘルファイア!」


 イフリートはものすごい火炎を放ってきた。あれで火柱を立てていたようだ。


「ぐっはっはっはっは! ぐっはっはっはっは! ぐっはっはっはっは! ひとたまりもあるまいっ! なっ!」


 しかし、火柱が消えた時、そこには何もなかった。当然だ。俺がそんな攻撃当たるわけにもない。


「絶対即死」


 俺はスキルを発動する。斬りかかった。


「そんな攻撃効くわけが……なにっ、ぐわあああああああああああああああああああああああああ!」


 炎の精霊イフリートは霧散した。


「まず一体」


 俺は炎の精霊イフリートを撃破した。

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