王女で力試し

大帝国ガゼフに俺達は向かった。


「なんかちょうど、魔晶石が輝いているわね。大帝国の方から」


「……そうか」


「どうやら大帝国に神託に選ばれた勇者パーティーのメンバーがいるみたい」


「一体、何人いるんだ?」


 あまり増えすぎるとパーティーというよりもギルドみたいな組織めいたものになってしまう。大集団。レギオンというのかもしれないが。


「それは私もわからないわよ。けどいいんじゃない? だって魔王と闘う上での戦力は多い方がいいんだから」


「確かにな」


 こうして俺達は大帝国ガゼフへと向かった。


◆◆◆


「君たちが援軍にきてくれた冒険者達か」


 俺達の目の前には帝王がいた。とはいえ、今まで見てきたような王様とは異なっている。どちらかというと、屈強な戦士のようだった。王族に生まれたから王になった、そういう世襲的な王ではなく、実力の高さ故に王になった、そんな感じの人だった。


「我が名はロイヤル・ガゼフ。この国の帝王だ」


「帝王ロイヤル様。俺達は勇者ユフィ率いるパーティーです。この度は魔王軍による脅威に貴国が晒されていると聞きつけ、はせ参じました」


「お金は! お金はいくらもらえるの! どれくらい! ねぇ! 帝王様! どれくらいくれるの!?」


「マリサ! お前は黙っていろ!」


「くっはっはっはっは! 欲望に忠実な奴だな。まあ、そういうのは嫌いじゃねぇぜ」


帝王自体まだ若いのだろう。せいぜい30代の後半のように感じた。どこか少年のような面影を見せる。無邪気な奴だった。


「俺達は実力主義でよ。その強さを元に金額は算定させてもらってるんだ」


「どうやって、どうやってその強さって測るのよ! さっさとやってよ!」


「そう焦るなって」


「……お父様。そのような者達で魔王軍の相手になるのですか?」


 少女が姿を現す。金髪をした少女だった。腰には剣を携えている。


「リーゼ……。すまなかったな。こいつは俺の娘だ。リーゼロッテというんだ。まあ、リーゼと呼んでくれ」


「初めまして。リーゼロッテです。冒険者の皆さん」


 美しい少女だ。気品がある。そして凛とした雰囲気。靡かない強さもまた、気に入る男は多いだろう。


 マリサは解析魔法を使用したようだ。


「どうだ? マリサ」


 リーゼロッテ・ガゼフ。年齢15歳。職業剣聖。


「ダーリン、あの娘……」


「なんだ?」


「まだ処女よ」


「そんな情報どうでもいいわ!」


 俺は叫んだ。


「LV200。攻撃力1000防御力1000魔力800俊敏性1000。保有スキル。聖剣スキル」


「強いな……」


「見て! シン! 魔晶石が!」


魔晶石が輝いていた。


「と、いう事が。彼女が次の勇者パーティーのメンバー。神託により選ばれたメンバーという事か」


「さっきっから何を騒いでいるのです。冒険者の方々」


 リーゼは首を傾げる。


「な、何でもありません!」


「そうだ。リーゼ、この冒険者達の力試しをしてくれないか?」


「私がですか?」


「ああ。お前なら不足ないと思うんだ。どうだ? そこの男。名前はシンでよかったよな?」


「はい。構いませんが。そちらはそれでよろしいのでしょうか?」


「うん。なんでだ?」


「見た所王女様でいらっしゃるようだ。お怪我をされるやもしれません」


「クックック! アッハッハッハッハッハッハ! 舐められたものだな! リーゼ。女の子扱いされているぞ! リーゼはこの国でも最強の剣士と称されているんだ。この帝国最大の切り札にして、砦でもある。そのリーゼに怪我だってよ」


「そこの黒いお方。シン殿でよろしいのでしょうか? そのような気遣いは無用です。婦女子として扱われる事は武人として侮蔑です。戦場では性別などありません。闘って勝つか、負けるか。生きるか、死ぬか。それだけの事です」


 見た目のイメージそのまま、気丈に彼女は振る舞う。


「怪我させるかなんて気にするな。全力で戦え。無論、リーゼに勝てなんて言わない。その様子をもとに査定させてもらう」


「そちらがそれでいいなら構いませんが」


「いいでしょう。では闘技場へ向かいましょう」


 俺達は闘技場へ向かった。













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