アリスが仲間に
「それで、これからどうするの?」
アリスは聞いてくる。暗殺者の館を出た俺達は落ち着いて話をできる余裕ができてきた。
「聞いてくれ。アリス。お前は神託により選ばれた勇者メンバーの一員らしい」
「私が……そうなの。シンもそうなの?」
「俺は違う。俺は例外的(イレギュラー)な存在だ。だが、他の二人は神託により選ばれた勇者メンバーだ。俺達は魔王を倒す為に旅をしている。そう、世界を平和にするという大義のもとに闘っているんだ」
「私が勇者パーティーの一員に」
「アリス、俺達と来てくれ。そしていつか、俺達のような恵まれない子供達のいない優しい世界を作ろう。俺達の刃は人を傷つき、殺める事もできるが、誰かを救う事もできるはずだ」
「いいよ。シンがいるなら。私もシンといたい。もう操り人形として生きる人生はこりごりなの。私は私の人生を歩みたい」
俺達は見つめ合う。愛おしい。唇がなまめかしく映った。3年前よりもアリスは大人っぽく魅力的になった気がする。
「シン……」
「アリス……」
「「こほん」」
二人は咳払いをした。
「ダーリン……。私達もいるんだけど」
「そうです。私達がいます。いくら幼馴染でもいきなりキスをしそうになるのは頂けません」
「私、自分がいちゃつくのはいいけど、他人にいちゃつかれる嫌なのよね」
「我儘ですね」とユフィ。
「うるさい」
「そもそも。二人はシンの何なの?」
「「なっ!?」」
アリスは根本的な質問をしてきた。
「恋人?」
「……そう言われると俺も困るんだが」
俺はこの子達とどうなりたいんだ。嫌いではない。勿論好きだ。好感は持っている。だが、俺には経験がない。恋愛経験の極端に少ない俺はどう対応していけばいいか悩んでいた。自分でもどうなりたいかわかっていない。
「二人とも恋人なの?」
「うっ……」
「それともまだ友達? セックスフレ〇ドってやつ?」
「ぶっ!!」
俺は噴き出す。
「それともそういう以前の関係、対等な関係じゃなくて、上下関係。性奴隷とか?」
「仲間だ。俺達は仲間」
「……そう」
俺は逃げた。
「ともかく、俺達は魔王を倒すための旅をしている。一緒に来てくれ、アリス」
人間関係の事は全てが解決してからでいい。この旅から生きて帰れる保証などないのだ。
「うん。わかった。私、シンといたい」
こうして神託により選ばれた勇者パーティーの一人。俺の幼馴染。暗殺者の少女アリスが仲間になった。アリス・フォートナ。それが彼女の本名である。
こうしてパーティーメンバーが四人になった俺達は旅を続ける。
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