魔道国国王と一騎打ちをすることに

マリサ・マギカ。


その名からわかるように彼女もまた正真正銘、魔道国マギカの王女であった。


ひとまず俺達は魔道国マギカに案内される事になる。今後の事を色々と相談したい事もあるし、マリサが強く希望したからでもある。


「ここが私の住んでいる王城よ」


 マリサは言う。


「マリサ様のお帰りだ!」


「マリサ様! ご無事でしたか!」


 兵士達が言う。兵士と行っても軽装で鎧も何も身につけていなかった。魔法兵と言った方がいい。普通の魔法使いだ。魔法で攻撃する為、剣などの武器は持たないのだろう。


「ええ。何とかね。お父様はどこにいるの?」


「国王陛下なら謁見の間にいらっしゃいます」


「そう。じゃあ、城にいるのね。わかったわ」


 こうして俺達は魔道国マギカの国王に面会する事になる。


◆◆◆◆◆


「私が国王です」


「私が王妃です」


 国王と王妃が玉座に座っていた。いかにも魔道士といった理知的な男だった。眼鏡をかけたクールな印象を受ける男性。青年と言って良い程若い。マリサはまだ15である。これについては聞いてもいないが自分からべらべらと喋り、ついでに俺の年齢を聞いてきた。


俺が18歳だと聞いた彼女は「3歳差! 私、少し年上が良かったんだ! 私達ってお似合いよね! 運命を感じるわ!」と熱烈に訴えてきた。


まあいい。その事を考えれば年齢はせいぜい40歳程度だ。王妃も若かった。美しい女性だ。やはりマリサの美貌は母親譲りという事だ。両親も美形だった。


「それでマリサ。紹介したい人がいると聞いているが、それはどなたの事かな?」


 国王は聞いてくる。


「はい! この人なのです! パパ!」


「皆の前でパパはやめなさい。国王と呼びなさい」


「はい! ごめんなさい! 国王!」


「それで、その男性はマリサにとって何なのですか?」


「この人の名はシン・ヒョウガさんと言って。将来を誓い合った恋人なの」


 マリサは顔を赤くして言った。


「なっ!?」


「なんですってっ!?」


 俺とユフィの顔が強張る。


「な、何だと!? き、貴様! それは本当か!?」


「……あらあらまあまあ。マリサちゃんもお年頃になったのね」


 国王と王妃も当然のように慌てていた。


「そ、それでマリサ、そこの青年シンと申したか。シン君とはその、行為はしたのか?」


「行為?」


「そ、その。男と女の交わり。男女の営みの事だよ」


「あー。まだ。けど、すぐにすると思うわ! だって彼私にぞっこんなんだから! 私達! 相思相愛なの!」


 誰がぞっこんだ! そして相思相愛だ! 今は突っ込んでいる場合ではない。余計にややこしくなりそうだ。


「ふう。そうか。まだか。結婚前の娘の貞操を奪われたとあっては思わず処刑をしていたところだよ」


 国王は放っていた殺気を治める。何となく察した。この父親は子煩悩を超えている。娘に異常な程の愛着を持っているようだった。


「パパ、だめよ。この方は私の命を救ってくれた恩人なんだから」


「恩人?」


「ええ。私がデーモンに襲われているところを助けてくれたの。それはもう。白馬の王子様さながらだったわ! 私はそれはもう運命を感じたんだもの!」


「そうか。娘の命を救ってくれたのか。それに対しては最大級の感謝の言葉を述べさせて貰う」


 急に好感を抱いたな。流石に娘の命を救ったとなれば態度も変わるか。


「だが! 私はまだ娘と君との関係を認めたわけではなぁい!」


 いや。認めて欲しいとは思っていないのだが。


「私と勝負だ! シン君!」


「はい? 国王と?」


「君は私を舐めているのか! 私の名はマジック・マギカ! 形ばかりの国王ではないのだぞ! 我が魔道国マギカの最強の魔法使いとして恐れられている、真実の王だ! 私と闘うのだ! そして勝利すれば娘との関係を認めてやろう!」


「ダーリンが私の為にパパと闘うなんて。やだ。どっちを応援すればいいの。やっぱり、ダーリンだけど。ごめん、パパ」


 だ、誰がダーリンだ。


「さあ! いくぞ! シン君! 城の外に闘技場があるのだ! そこで矛を交えようではないか!」


「は、はぁ……」


 俺は流されるように闘技場へと連れられていった。

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