ステータスを鑑定してもらったらあまりに高すぎて驚かれる

「是非またいらしてください!」


「お待ちしております! シン様! 勇者ユフィ様!」


 村長とメアリーが手を振る。村から覗き魔が出てきた事については黙っていたほうがいいだろう。どうせもうそんなにここに来る事も多くない。知らない方が幸せな事も世の中には確実に存在する。


「これからどうする?」


「近くにそれなりに大きい国があるの。そこで冒険者登録をするわ」


「冒険者登録?」


「ええ。それがないと国を跨いだりするのに何かと問題があるのよ。一応職業にもなるもの」


「なるほど。たしかに流浪の旅人、もとい無職ではなにかとやりづらいのだろうな」


「トリスティアという国があるの。まずはそこに行く予定よ」


「ああ。そうしよう」


 俺達はトリスティアへ向かった。


 トリスティア。


 多くの人々が行きかう、貿易の都だ。黒装束を身に着けている俺でも大して目立ちはしない。多くの亜人種も入り混じっているので、大した事ではないのだ。


「……まずどうする?」


「冒険者ギルドに行く予定よ」


「冒険者ギルド……」


 俺は嫌な予感がした。危険だ。冒険者ギルド。数々のSランクモンスターを倒した俺のレベルがどれほど上がっているか自分でもわからない。


 俺には冒険者に関する知識がある。まず冒険者として活動するにはステータスの測定などを受ける必要性があった。俺のステータスがあまりに高すぎた場合、周囲から目立ってしまう。


「まずい……」


「え?」


「俺は目立つわけにはいかないんだ。俺は暗殺者だ。闇夜に紛れ、一撃にして仕留めるのが仕事だ」


「何を言っているの?」


「鑑定士という職業の人がいる。まずはその人を探そう。そして俺のステータスを調べて貰おう」


「わかったわ」


 こうして俺達は鑑定士のところへと向かう。


 ◆◆◆


「ふふふっ。どうしたんだい?」


 鑑定士の館を訪れる。そこには占い師のような老婆がいた。占いの館かのような錯覚を受ける。テーブルの上に置かれている怪しげな水晶があるのだから猶更の事だった。


「ここは鑑定士の館だよ。ステータス、武器、防具、アクセサリー。アンティークだってなんでも鑑定することができるよ」


「俺達のステータスを鑑定して欲しい」


「ほう。ステータスをかい? じゃあ、そちらの女性から。ほわあああああああああああああああ!」


スキルが発動されたようだ。鑑定士は当然のように鑑定スキルを持っている。

水晶にステータスが表示される。


『ユフィ・アルドノア。年齢15歳。性別女性。スリーサイズB8――。』


「ちょっと! スリーサイズまで表示しないでよ!」


 ユフィは顔を真っ赤にして言い放つ。


「おっと。すまないね。そこは非表示にしておくよ。処女か非処女かもね……くっくっく」


「わ、私は処女よ! って! 何を言わせるのよ!」


「気にするな。15歳で処女など普通の事だ。性交経験が早いからといって偉いわけではない」


「真面目に答えないでよ!」


 気を取り直す。


『ユフィ・アルドノア。年齢15歳。性別女性。職業勇者。ⅬⅤ5。保有スキル。剣術。勇気(精神系異常抵抗スキル)。保有魔法。フレイム、コールド、ライトニング。ステータスHP100 攻撃力50防御力50魔力50俊敏性50』


「なんというか、勇者らしいステータスだねぇ。取り立てて言う事のない」


「わかっているわよ。これから強くなっていくんじゃない」


「別に否定しているわけじゃないよ。ただそう思っただけさ。それで、次は隣の黒いお兄さんを鑑定するけど、いいね?」


「ああ。俺はスリーサイズや体重を記載してもいい。気にしない」


「誰も知りたくないわよ。男のスリーサイズなんて」


「そうか。なら非表示でいい」


「あいよ。わかったよ非表示だね。初体験の有無も非表示にしておくよ」


「……ああ」


「ちなみにあるの?」


「何がだ?」


「経験の有無よ。私だけ言うのも不公平じゃない」


「別にない」


 俺は即答した。俺には童貞を恥ずかしいという概念がない。そんなものは仕事に関係がないからだ。


「そうなんだ。よかった」


「それじゃあ、お隣のお兄さんのステータスを鑑定するよ! ほわああああああああああああ!」


 鑑定士の婆さんはスキルを発動させる。


『シン・ヒョウガ。年齢18歳。性別男性。職業暗殺者。ⅬⅤ999。保有スキル。『絶対即死』。暗殺術特上。ステータスHP99999 攻撃力9999防御力9999魔力9999俊敏性9999』


「な、なによ! この馬鹿みたいなステータス! カンストしてるじゃない!」


 ユフィは叫ぶ。


「なんじゃ! このステータスは! こんな高いステータス、わしは鑑定士を始めて50年で初めて見たぞ! そして、魔法を一切覚えていないのに魔力まで高いのう。ステータスの無駄遣いじゃ」


「やはりな」


 俺は呟く。Sランクモンスターを倒し続けた俺のⅬⅤは知らないうちにカウントストップしていたようだ。恐らく世の中で俺よりⅬⅤが高い人間はいない。


「これはまずいな……」


「まずい? どうして、すっごい高いステータスじゃない!」


「だからまずいんだ。こんなステータスで冒険者ギルドにいったらどうする? 目立ってしまうではないか」


「そ、そうね。冒険者ギルドでもステータス測定をするものね。間違いなく周りから驚かれるわね」


「ああ。だからだ。俺はまずいと言ったんだ。俺の職業は暗殺者だ。闇夜に紛れて敵を討つのが俺の仕事だ。目立ってしまうとやり辛くなるんだ」


「け、けど。どうやって」


「アイテムの中には幻惑系のアイテムがある。中にはステータスを改竄するアイテム、もしくは魔法なんかも存在するらしい。探してみると良いかもしれないのぉ」


「……ありがとうございます。鑑定士のお婆さん」


「鑑定士さん、お代を」


「いらんよ。あんなすごいもの見せられたら、それだけで満足じゃわい」


「そうですか。ありがとうございます。それで鑑定士さん。どうかこのことはご内密にお願いします。職業柄目立つ事は好ましくないのです」


「わかっておる。どうせ顧客の情報は厳守するのがこの仕事の鉄則じゃ。最初から話すつもりなんて微塵もなかったわい」


「よかった。ありがとうございます。鑑定士さん」


「またなにかあったら来るんじゃぞ」


 そして俺達は鑑定士の館を出た。


 ◆◆◆


「それでどうするの? 改竄系のアイテムを探すの?」


「そうだな。そうなるな。改竄をしなければまずい。探そう。そのアイテムを、きっとあるはずだ」


「ええ。探しましょう」


 俺達はこの国でステータスを改竄するアイテムを探す事になる。

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