倒すのが一瞬すぎて誰も見えなかった『絶対即死』スキルを持った暗殺者。護衛していた王子から何もしない無能と追放されてしまう~今更戻ってこいと言われても美少女だらけの勇者パーティーが俺を手放さないんで~

つくも/九十九弐式

暗殺者、クビになる

「貴様のような何もしない暗殺者はクビだ! シン・ヒョウガ!」



 宮廷で暗殺者(アサシン)をしていた俺が護衛をしていた皇子はそう告げてきた。



「なぜですか?」



 暗殺者(アサシン)である俺は淡々と聞く。職業柄あまり感情を表に出さないのだ。



「先ほどの説明を聞かなかったのか! 貴様は隣国への遠征、それから帰ってくる間、何もしなかったではないか!」


 そういって皇子カインは俺を非難してくる。


「……何もしていなかったのではありません。俺はちゃんとモンスターを討伐していました」


「ふっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!」


「何かおかしい事がありましたか?」


「おかしいに決まっているだろうが! 我々が目撃したのはSランクの凶暴モンスターとして知られるベヒーモスの死骸と、それからSランクのモンスターとして知られる竜でも最強のダークドラゴンの死骸だけではないか! 私がその死骸を見た時、どれほど胸を撫でおろしたことか。生きているうちに遭遇したら、我々は間違いなく全滅していたはずだ!」


「はぁ……」


 そのモンスターは俺が倒したんだけどなぁ。試しに言ってみるか。なんて返ってくるか想像がつくけど。


「そのモンスターは俺が倒したんですけど」


「はっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは! はっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!」


「笑いすぎてアゴ外れませんか?」


「くだらない冗談はよせっ! あんな凶悪なモンスター、倒せるわけがないだろう! それに貴様は我々と同行していたんだぞ! 一瞬目を離した隙に倒していたとでもいうのか!」


「そうです」


「もうよい。貴様の冗談を聞いている程私は暇ではない!」


「……はぁ。それで俺はどうすればいいんですか?」


「聞いていなかったのか! 貴様のような何もしない無能の暗殺者はクビだと言っているんだ!」


 皇子は俺にそう怒鳴ってきた。



「はぁ……」


 俺は溜息を吐く。暗殺者はあまり印象のよくない職業だ。なにせ暗殺するのだから。人を殺す闇の職業だと世間では思われている。俺もできれば人を殺したくない。真っ当な仕事をしたいと思って、暗殺者ギルドから宮廷に転職してきたのだか。

 こんなに僅かな期間でクビになるとは思ってもみなかった。


 また暗殺者ギルドに戻るか。また、人を殺す生活に戻るのか。だが、そんな仕事は嫌だ。俺は暗殺者だ。だが、人間を殺すのが好きなわけじゃない。

 もっと真っ当に世の中の役に立つ仕事がしたいんだ。



「……仕事探すか」



 俺が溜息を吐いていた時だった。



「きゃああああああああああああああああああああああああああ!」


 

 女の子の悲鳴が聞こえてくる。



 ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!



 それから獣のような咆哮だ。かなり大きな声だ。大型モンスターの咆哮だ。



「……なんだ」



 俺は慌てて声がする方向へと走っていく。職業柄高速で移動しても足音はしなかったが。

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