アイセカイドル。

伊藤える

第一章 アイドル、異世界に行く

メンバーを紹介します

 私たちアイドルグループの『ディアーナ』は函館に旅行することになった。

 いつものグループのメンバーだ。


「武道館も終わったし、どっかみんなで遊びに行かない??」

「いいかも。そういえばプライベートでみんなで旅行したことなかったね」

「それいいやん! どこ行こっか。やっぱ海外?」

「そんなに長い休み取れないよ。学校もあるし」

「そうだね。じゃあ沖縄か北海道?」

「それいい! でも、沖縄は海入れんのかな?」

「まだ入れるんじゃない? でも美味しいものが食べたいかも」

「そうだよね。美味しいもの食べたらブログにも上げられるし。一石二鳥じゃん」


 誰が何を言ったのかは殆ど覚えてないけれど、話の流れはこんな感じだったと思う。あとは札幌にはツアーで行ったことがあったので、だったらまだ行ったことがない函館に決まったのだった。


 函館はとてもいいところだ。海も近いし山もあるし、東京より涼しいし、何より海鮮がとても美味しい!


 口の中にそれを入れた。


 うん、美味しい。幸せ。


 食レポだったら失格だろうけど、アイドルだから美味しそうに食べていれば大体合格なのだ。


「スイって本当に幸せそうに食べるよね」

「うん。何がって顔がカワイイからね」

「なんやねんこのヤロウ」


 頭をパシンっと叩かれた。

 紹介するね。


 メンバーその一。

 叩いてきたのはミユキ。

 この子はとにかく歌が上手な関西人だ。

 顔は私ほど可愛くないけれど、人当たりが良くて付き合いもいい、グループのツッコミ役の信用できる子だ。

 私と一番仲が良いと思う。


「こら、料理溢れっちゃったじゃん」


 メンバーその二。

 みんなをまとめるリーダーのナナ。

 この子はグループで一番のしっかり者だ。

 顔も可愛くって(私ほどじゃないけど)スタイルも良くて(私ほどじゃないけど)女優さんみたいで、家もお金持ちで目黒の豪邸に住んでいて、でも歌とダンスはあんまりなので、何でこんな子がアイドルをやってるんだろうと時折思うんだけど、凄くしっかりしていて何事も一生懸命で、みんなの頼れるリーダーだ。


「ありがとう、マホ」

「……うん」


 お皿から溢れた野菜をすぐに片付けてくれたのはメンバーその三のマホ。

 この子も実は関西人なのに、ミユキとは違って口数がとても少ない。

 コンサートのMCで一言も喋らない日もあるんだよ。

 表情も驚くほど鉄仮面で、何でこの子もアイドルやっているんだろうと思うんだけど、ダンスがキレキレで格好良くって、髪が黒く長くて綺麗で、女性ファンは一番多い。(悔しい!)

 でも知ってるんだ。

 レッスンだけじゃなくて家でも凄く練習をしていて、とても努力家なんだ。

 あまり会話をすることはないけれど、私たちの大切なメンバーだ。


「デビューしてから四年も経ったんだね。たまにはこういうのも好きだな」


 何だか私たちがじゃれているのを見て感慨に浸っているのはメンバーその四のセイラ。

 グループ結成時から一番雰囲気が変わったメンバーだ。

 彼女は私たちと違って、研修生歴がとても長かった。

 だからか、アイドルになることに、一番人生を掛けていた子だと思う。

 歌もダンスも上手いし、ステージでの表現力も高くて肌も宇宙人みたいに白くて自撮りも上手。化粧やお肌のケアも仕草も言葉も全て手を抜かない女の子で人気が一番あって、アイドルサイボーグという二つ名もあるくらいだ。

 今は割とクールだけど、昔はぷりぷりしていて、本当にアイドルしてる感じ。

 そのせいか、研修生の先輩でもあったし、私たちとは当初とても距離があったのだ。

 それが何かきっかけか思い出せないけれど、距離が縮まって、アイドルアイドルしてるのがいつの日か何だか普通になって、自然と本当の意味でグループの一員になった。

 ずっと彼女にセンターを取られるのは正直悔しいけれど、そうなるのも納得してしまう、私たちにとってかけがえのない人だ。


 最後に私?


 私はスイ。翠って書いてスイと読む。

 私はビジュアル担当だよ。グループだけじゃなくプロジェクト全体でも顔が一番可愛くて、スタイルも良くて元気もあって、歌もダンスも表現力も後輩たちが憧れる最強のアイドルだ。


 ちょっと嘘。


 顔は一番じゃないけど結構カワイイし、元気が良くって最年少の妹キャラ。

 子供扱いされるのは少し納得のいかないときもあるけれど、メンバーにもファンにもとても愛されていると思う。

 でも、それに甘えてるだけじゃ駄目だよね。

 自分が一番可愛いと思わなきゃ駄目だし、歌もダンスも最強を目指さなきゃ。

 だってアイドルなんだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る