あなたのやり方で抱きしめて!【改稿版】
小林汐希
第一章 高校を中退した私…
一話 今日のランチはじめます!
「じゃぁ
「はいっ。すぐにお店開けてきます」
「頼んだ!」
お店の奥からの声を聞き、私はもう一度頷いてお店の扉を開けた。
「いらっしゃいませ。ランチタイムお待たせしました」
「お、結花ちゃん今日も元気そうだね?」
「はぃ、今日も頑張っちゃいますよ!」
いつもお昼ご飯を食べに来てくれる近所の会社員の人、紹介されたフリーペーパーなどを見て来てくれたカップルなど、小さなお店の客席は毎日開店と同時に埋まってしまう。
注文を聞き、その間にもカウンターに並べられたものをお客さんのテーブルに運んでいく。
特に平日のランチタイムは時間も勝負だから、席待ちで並んでいる人にもメニューを渡して、先にオーダーを頂いてておく。場合によっては途中でテイクアウトに切り替えるときもある。
「
「本当に。結花ちゃんが来てくれて、助かってるんだよ。あっという間にうちの
レジでお会計をしているお客さんとこのお店の奥さん・菜都実さんのそんな会話を後ろで聞いた。
「じゃぁな結花ちゃん、また明日もよろしく!」
「はぃ、ありがとうございました!」
すぐにテーブルを片付けて、新しくセッティングをし、待っているお客さんのグループの人数を頭の中で確認していく。
これはこれで頭を使うの。店内を見回りながら、空いたテーブルを片付けると同時に厨房にお願いをして、次のお客さんが席についてすぐに出来たてを出せるようにタイミングを調整するのも私の役目だから。
「結花ちゃん、お疲れさま。食事用意しておいたよ?」
午後一時半を過ぎると、ぐっとお客さんの数も減るから、厨房にいたご主人の
「ありがとうございます。すぐ食べちゃいますね」
「ゆっくりしておいで。さっきのお客さんもお世辞じゃなくてさ。うちも本当に大助かりの大活躍なんだからね!」
菜都実さんに肩をたたいてもらって裏に入ると、奥の小部屋のテーブルに今日の日替わりランチメニューが用意されていた。
手作りのコーンクリームコロッケとエビフライ、どちらも大きなサイズが二つずつ。コンソメスープとライスにオレンジジュースという組み合せ。
箸を入れてみると湯気が立つくらいに熱々で、残り物などではなく私のために作ってくれているのが分かる。
ふとカレンダーを見上げて思う。
「そっか、もうそんなに経ったんだ……」
このお店でお仕事をさせてもらって、この五月末で気がつけば八ヵ月が過ぎていた。
こんなに誰かの役に立っていると言ってもらえるのが嬉しくて、夢中で毎日を駆け抜けてきた。
きっと今の自分の姿は一年前の私からは想像もつかないに違いないんだもの。
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