質問はこれを永遠に禁ず。

玉手箱つづら

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「このクラスでは、質問を禁止にします」

 太刀花たちばな先生は朝の会でそう言って、「なんで?」とつぶやいた竜くんの頬をひっぱたいた。竜くんはポロポロと涙をこぼし、「なんでぇ!」と喚いて、もう一度先生にひっぱたかれた。それからは言葉なく泣いていた。

 僕たちも、何も言えなかった。


 太刀花先生は学校で一番やさしい先生だった。

 僕たちが何かを間違えても、悪いことをしても、けっして怒ったりはしなかった。ひざを曲げて、僕たちと向き合って、話を聞いてくれた。叱るときも、おだやかな言葉で、僕たちがちゃんと分かるように叱ってくれた。先生はお母さんよりずっと年上だから、人間は歳を取るにつれて、やさしく、あたたかくなるんだと僕たちは思っていた。

 先生が僕たちに手をあげるなんてことは、当然、まったくなかった。

 チャイムがなって、先生はそのまま授業を始めた。竜くんはまだ泣いている。僕たちはみんな縮こまって、息の音すら抑えこもうと努めて、だから、竜くんのしゃくりあげる声がずっと聞こえている。先生はそれを気にも留めずに教科書を読んで、時々黒板に何かを書いた。

 僕は怖くて、顔をあげられなくて、初めてノートに何も書かずに一日を過ごした。

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